ある日、知人宅にお呼ばれをした。
大人、子供合わせて10人程で楽しむホームパーティはちょっとした非日常。
大人も子供もテンションが上がらないわけがない。
美味しいお酒とお食事とおしゃべりに花が咲きまくり
私自身、とてもリラックスした時間を過ごしていた。
すると、1人の男の子が私の側に来るなり
「ナイショ話があるから、こっち来て」と小声で耳打ちし、手を引っ張るのだ。
可愛いじゃないか!
うっかり、キュンとしてしまったではないか!
男の子を持つ世のお母さん方は、こういう瞬間を味わっているのか!?
素敵じゃないか!
と、ひととおりの感情が胸の中を駆け巡った。
部屋の片隅へ移動した私に小さな彼が辺りを伺いながら小さな声で問う。
「柊希ちゃんは、どうしたらママが喜ぶと思う?」
ん?ちょっと話の先が読めないぞ。
「ママを喜ばせたいの?」
「うん」
「どうしてそう思ったの?」
「ママいっつもボクのお世話で忙しいから笑わないんだ」
思わず、ドキリとしてしまった。
確かに小さな彼のママは、最近お疲れ気味なのだ。
そして、『ボクのお世話』という言葉。
きっと大人たちの会話から拾った言葉なのだろうと思った。
ドキリとしている私を余所に、彼は続けた。
「ママ、パタパタもあんまりしない。」
※「パタパタ」とはお化粧とか化粧水を付ける事などを指しているようで、可愛らしいジェスチャーで説明してくれた。
「そうか~、じゃぁ、今夜ママがお風呂からあがったら、
ゆっくりパタパタしていいよ。って言ってみたらどう?」
「うんっ!ママにはナイショだからね」
そう言うと男の子は他の子供たちの輪に加わっていった。
子どもは大人が思う以上によく見ている。
そして目にした事の本質のようなものを、純粋に心で感じ取っているのだと感じだ。
更に無条件の愛情で「ママに何かをしてあげたい」と思っているのだ。
しばらくして、小さな彼の作戦が成功したのか気になり、彼のママに聞いてみたのだ。
彼には大変申し訳ないのだが、
大人の事情という事で私は彼との約束を破る事になった。
ママにナイショ話の一部始終を話したのだ。
小さな彼は、お風呂上がりのママに
「ゆっくりパタパタしていいよ。ボクは自分で体ふける」と言ったらしい。
自分の体より大きなバスタオルと格闘する我が子に
何度も手が伸びたそうなのだが、あまりにも彼が真剣に言うものだから、
色々と気にかけつつも、
その夜は彼の言葉に甘えてゆっくりとスキンケアをしたのだとか。
とは言え時間にして2、3分程の事だったようだったけれど。
私と小さな彼とのナイショ話を聞き、色んな想いが駆け巡った様子の彼女。
今は時々、彼女の方から「今日はゆっくりパタパタしてもいいかな?」と
おねだりしてみるのだそう。
そうすると、小さな彼は満面の笑みで「いいよっ!」と言ってくれるのだとか。
3分間の中に溢れるキラキラした愛情のやりとり。
子どもだって同じなのだ。
ママの為に何かしてあげたいし、ママに笑っていて欲しい。
自分に何かできないかな?って小さな胸でいっぱい考え探している。
たまには我が子を信頼して甘えてみてもいいんじゃないかな?
頼ってみてもいいんじゃないかな?
きっと、頼られて嬉しいのは大人だけではない。
自分の事も相手の事も信頼して向き合うと
もうひとつ奥にあるキラキラした愛情のやりとりができるのだ。
そこには年齢も性別をも超えた、素敵な瞬間がある。