幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

素直で心柔らかなかな年下のあの子から教わったこと

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私が学校を卒業して直ぐに就いた職業は今とは全く畑違いの業種だった。
今、改めて振り返ってみると、
当時築いた人間関係は今でも続いているし、
違う職業に就いた後も当時のスキルが思わぬ形で生かされたりもして
人生は面白いものだな、と思う。

社会人数年目、先輩方のおかげで自分の仕事にも慣れ、
周りの仕組みも把握でき自分の判断でも動けるようになった頃、
私の部署に年の離れた初々しい女性(女の子と言いたくなるような)が入社した。
仕事を覚えようと、常にポケットには小さなメモ帳とボールペンが携帯されていて
私に書類を持ってくる度に、細かく質問をし、メモを取る彼女。
年下ながら、とても素直な彼女の姿勢に
私自身、見習うところがたくさんあった。

そんな彼女に、周りも私も信頼を寄せていた。
それでも彼女は、
「私はこう思ってこうしたんですけど、あってますか?」と丁寧に確認をする。
分からないことを、分からないままにしないし
何となく分かっている事でも、しっかりと根っこの部分から理解しようとするのだ。

半年ほど経ったある日、
私は彼女にそのメモ帳とペンはもう必要ないんじゃない?と聞いた。
彼女は、
「いつ私の知らないことが話に出るか分からないから
もうしばらく持ち歩きます。
だから仕事の時はポケットのある洋服なんですよ。」
とニッコリ笑った。
その顔は今でも私の記憶に残っている。

ある時、仕事にも慣れたであろうある彼女に
「お願いがあるんだけど。」と声をかけられた。
今日は2人だけでランチをしに行きたいお店があるのだけれどもいいだろうか?というお誘い。
幸い私に好き嫌いはないので特別断る理由もなく
彼女ご所望のお店へ連れて行ってもらった。
一般的な和食の定食屋だった。

それぞれ、注文を済ませたのだけれども、
彼女が注文したのは私と同じ焼き魚定食だった。
いつもお肉を頼む印象が強かった彼女。
「珍しいね、お魚なんて。」と私が言うと彼女はハニカミながら
「今日は、このお魚をきれいに食べられる食べ方を教えてほしくて」と言った。
「ん?」
「本当は焼き魚、好きなんだけどきれいに食べられないから
人前では食べなかったんだけど、
きれいに食べられるようになりたいから教えてもいたくて。
でも皆が居ると恥ずかしいから今日は2人がいいなと思って」
「だから、私がメニューを決めた後に同じ物にしたの?」
「うん」

私がお肉を選んだらどうするつもりだったんだ、と思いながら
なんて、可愛い後輩だ!と思った。
と同時に、苦手な事を出来るようになろうとする気持ちや、
誰かに助けを求められる素直さに胸がいっぱいになった。

その後も数回、2人だけで焼き魚定食を食べに行った。
そしてある時、仕事場の女性数人でそのお店へ行ったのだか
彼女は焼き魚定食を美味しそうにきれいに、たいらげた。
お店を出た時に「もう大丈夫みたい、ありがとう」と言われて
とても嬉しかったのを覚えている。

そんな彼女も現在は30代。
お互いに違う職に就いているけれど、近況報告をし合う仲だ。
そして今でも、あの素直さは健在だ。
私も彼女のように素直に、そして心柔らかでいたいな、と
焼き魚定食を食べながら思うのだ。


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