今回は、このシーズン至る所で目にする“ポインセチア”にまつわるメキシコの伝説をご紹介します。
温かいお飲み物片手に、のんびりお楽しみ下さいませ。
とある田舎暮らしの少女は、クリスマス・イブの夜に神妙な面持ちで過ごしていました。
教会に飾られているイエス像に捧げる贈り物が何もなかったからです。
教会へ向かう道すがら、貧しくて小さな贈り物すらできないと悲しんでいる少女に、
ある少年が言いました。
贈り物が何であったとしても、愛をもって心から贈るなら、
どんなにささやかな贈り物でもイエスは受け取ってくれると思うよ。と。
その言葉に勇気をもらった少女は教会の庭で雑草を集めました。
その雑草を紐で縛り、小さなブーケを作ったのです。
大したものではないけれど、その小さなブーケに自分の心を込めました。
少女が雑草のブーケを手に祭壇に近づくと、
村人の中には、聖なる御子に雑草を贈るなどもってのほかだと、少女の事を非難する人もいました。
それでも、少女はこの雑草のブーケを贈る決め、教会の前まで行くと膝ま付くと、そのブーケをそっと置きました。
すると、その少女が作った雑草のブーケが突然、真っ赤な花に変わったのだそう。
教会に集まっていた村人たちは口々に「クリスマスの奇跡だ」と言いました。というお話です。
メキシコでは、このような伝説と、クリスマスの頃に花を咲かせるポインセチアから、
ポインセチアを“クリスマス・イブの花”としたのだそうです。
メキシコに伝わっている伝説なのですが、私が初めて知ったのはイギリスに住んでいた時でした。
日本とは違うクリスマスの雰囲気を肌で感じながら過ごしていたある日、知り合い宅のクリスマスの飾りつけの手伝いを頼まれました。
特に用事もなかった私は二つ返事で引き受け、そこの子供たちと一緒に飾りつけをしました。
部屋の中にセッティングされた大きなもみの木に、
たくさんのオーナメントを飾り、お部屋のインテリアもクリスマス仕様にします。
届き始めたクリスマスプレゼントをもみの木の下に置き、ポインセチアも飾ります。
ポインセチアを飾りながら、当時小学校4年生だった男の子が、このお話をしてくれたのです。
そして彼は、「心を込めて作ったプレゼントは、もらった人をハッピーにするんだよ」
と言って、
彼が紙粘土で作ったペンダントトップの付いたネックレスを、私の首にかけてくれました。
そして「これで柊希はもっとハッピーだね」と言ったのです。
私も帰国し、自分の日々に一生懸命で、今では連絡を取ることもなくなったけれど、
この時期にポインセチアを目にするたびに、この伝説と彼の事を思い出します。
そして、大人になった彼もハッピーでありますように。そう思う季節です。
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