今回はイギリス文化のひとつでもある“パブ”をご紹介しましょう。
そもそもパブとは、“Public House(大衆・公共の家)”の省略で
イギリスの人たちにとってパブは、
単にお酒を飲む場所というだけではなく
コミュニケーションを取る場として
第二のお家、
みんなのお家、
のような感覚で大切にされてきた歴史があります。
パブにも様々なタイプがあります。
昼間に営業しているパブもあり、
観光客や地元の人が休憩がてらカフェの代わりに使うこともあります。
お酒に限らず、コーヒー、紅茶、ジュースなども豊富にそろえられています。
お食事にこだわったグルメ色の強いパブもあれば、
お店の奥に中庭があってホームパーティ気分でお酒やお茶を楽しめるパブ、
スポーツ観戦(特にサッカー)を楽しむスポーツパブもあります。
珍しくて私が好んでいたのは、
おしゃれな写真集が店内の至る所に飾られていて手に取ることも出来るパブ。
好きな物を楽しめる空間は夢のようでした。
私は出来る事なら食事も充実しているグルメパブを開拓したかったのですが、
こればかりは、入ってみなければ分からないのです。
ある日の私は、お気に入りの美術館で1日過ごそうと朝から出かけていました。
お昼時、周辺にあるパブを見て回り雰囲気のよさそうなそこへ足を踏み入れました。
イギリス人は日本人に似ているところがあるのか
いきなりこちらのパーソナルスペースに踏み込んでくるような事はしません。
必要最小限の会話だけで、
良くも悪くも愛をもって放置してくれるのです。
だからゆっくりと美術館の余韻に浸っていたのですが、
突如、カウンター奥の方から「チンッ」という電子レンジ音。
肩を落としました。
「今日のパブははずれだ・・・・・・」と。
出てくるのは近所のスーパーで見かける冷凍食品です。
こういう経験をする外国人がイギリスの食事は美味しくないとふれてまわるのだな、と妙に納得する瞬間でもありました。
ただ、雰囲気はどこも、それぞれの特徴があり素敵なのです。
その日選んだパブは、
ふかふかした渋い色味の絨毯に、艶やかな飴色の調度品や家具、絵などが
センス良く配置してあって私にとっては異空間でした。
まるで、シャーロックホームズやハリーポッターの世界がそこに在るかの様。
空間を味わっていると「チンッ」という音など記憶から消えてしまう気さえしてくるのです。
しかし、地元の方にそんな思いを話すと9割がた失笑されます。
「どこがそんなに良いのか、理解に苦しむ」のだそう。
結構辛口です。
きっと、外国の方が日本に来てお土産店の刀片手に満足そうな笑みを浮かべているのに等しいのでしょうね。
隣の芝生はなんとやら、です。
様々なイギリスのパブを写真に収めている洋書などもありますので
気になられた方は、書店などで手に取ってみるのも楽しいかもしれません。