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幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

どんな事も一番難しいのは最初の一歩。小さな“出来た!”を重ねて“大きな出来た!”に。

想い 日常

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最近、とあるお仕事で久しぶりに筆を握った。

筆と言うのは書道で使う、あの筆だ。

エアコンの音が微かに聞こえるだけのシンとした部屋でゆっくりと墨を磨る。

既に液体状になっている便利な墨汁があるのだけれど、

この日は頭の中を空っぽにして気分を落ちつけたくて、墨を磨っていた。

時間はかかるけれど好みの色合いを出せるのも楽しい。

 

何度か試し書きをし、

納得できるものししたくて練習を重ねる。

ふと、恩師の事を思い出し手が止まった。

 

その時代の人にしては背が高く、がっちりとした体格で

休憩時間になると透き通った黄金色のべっこう飴をくれるのだ。

自分の気持ちを優先していいという大らかな先生で

気分が乗らない日は5分しか経ってしなくても止めていいし、

気分が乗る日は、いつまでだって書いていていいと言ってくれていた。

私も30分程で帰る日があり、

「今日はもう帰るの?」と笑いながら言われる事があったが

躊躇せずに「はい」と笑顔で返せる環境を作ってもらっていた事に、

この年齢になって改めて感謝している。

そうかと思えばお昼ご飯も夕飯も忘れ、

先生の声も届かぬ程の集中力で書き続ける日もあった。

今思えば、そんな私の気まぐれに長時間付き合ってくれていたなんて

感謝の言葉以外、何も見つからない。

 

その恩師によく言われていた言葉がある。

「柊希ちゃん、そこが気になるのは分かるけれど

一度、最後まで通して書いてみてごらん。」

 

自分の体より大きな紙に作品を書く際に、

出だしの数文字が納得できず、そこばかり練習しているものだから

全体を見る事ができないのだ。

木を見て森を見ずの状態。

相変わらず納得できずにいる出だしから一生懸命意識を逸らし

全体を書き上げてみる。

 

すると、不思議と見えていなかった事が見えるのだ。

そして、自分が気にして拘っていた部分が、

それ程エネルギーを注ぐ部分でない事が分ったり

逆に自分らしい作品の味になっている事もあった。

何より、それを自分で目視し次が見えてくるのだ。

 

どんな事も一番難しいのは最初の一歩なのかもしれない。

思うように出来なかったり、

どこから手をつけたらいいのか分からなくなってしまったりする事がある。

そんな時は、目の前の出来る事からやってみる。

思うようにいかなくても、

そこに拘りすぎずに今の自分に出来る事をチャレンジしていると

小さな「できた!」が重なって

いつか大きな「できた!」になっている。

私は同じことに囚われている時、この恩師とのやり取りを思い出す。

 

それにしても、言葉で言ってしまえば早くて簡単な事を

当時の私の気持ちやペースに寄り添うようにして見守ってくれていた恩師。

もうお話しする事は出来ないけれど、

自分が感じていた以上に

大きな愛情を注いでもらっていたのだと大人になって気が付いた。

恩師と私を繋いでくれた書道が、私は今でも大好きだ。

筆に触れる事で、教えていただいた全てが私の人生を豊かにしてくれているということが届くといいなと思う。

画像出典:https://jp.pinterest.com/