その日は、年末に駆け込むように私の元へやってきたある仕事の関係で
明け方まで天然石を見たり、天然石に触れたりしていました。
天然石という物は本当に不思議なもので、生きている、と感じる瞬間が本当に多いのです。
目に留まった天然石に触れていると、
まるで目を覚ましたかのように、みるみるうちに輝きが増していったり、
色に深みが増して濃く、鮮やかになっていったり、瑞々しさが増したりすることもしばしば。
隣同士に並べてみると天然石同士の相性もあるようで、
互いを引き立てあうかのように輝きが増す組み合わせもあれば
単体の時の輝きが無くなってしまう場合もあります。
なんだか、人にも似ているし、花や観葉植物に触れる時の感覚とも似ていて、魅力的です。
天然石を同じようにカットしても、ひと粒、ひと粒、表情が異なります。
私たち人間よりも、気が遠くなるような長い年月を経て私たちの前に在るのだと思うと、愛おしくてたまらなくなります。
また、天然石と人とのご縁というものも、確かに存在するのだと感じる瞬間も多くあります。
求めさえすれば、ある程度の物は手に入る流通経路が安定しいる時代であるはずなのに、
普段は起こり得ないような何かしらのアクシデントが重なり、
なかなか欲している方の手に渡らない事があります。
一方で、奇跡のような出来事が重なり、本当に必要としている方の手に渡る事もあります。
そして、しばらく経って、「そうなるようになっていたのだ」と思わざるを得ないような事が判明する。
お互いに引き合わなければ出会えない。
そんな事を当たり前のように感じさせてくれる天然石を見ていると、
古代より日本に限らず世界中で神聖なものとして扱われてきたのだろうと納得してしまいます。
そんな事もぼんやりと頭の隅で思いながら天然石に触れていたのだけれど、
石を置いていたトレーに手が当たってしまった振動で、
2粒だけコロコロッと列から外れるように移動した石があったのです。
太陽の名を持つ「サンストーン」という石と
月の光を宿したようなその名も「ムーンストーン」というご存知の方も多い石。
太陽と月か、などと思いつつ外も白んできたようだったのでカーテンを開けのですが、
真っ白な空にムーンストーンのような月が空に浮かんでいました。
暗闇ではなく辺りがしっかり見える程に明るくなった空に、くっきりとした輝きを放ちながら浮かぶ月。
とっても素敵でしばらくカーテンを握ったまま空を見上げていたのですが、ふと気づいたのです。
部屋の反対側の窓からは太陽の日差しが少しずつ差し込んできていることを。
思わず小走りで部屋の反対側の窓へ駆け寄り、
勢いよくカーテンを開けると徐々に登ってきている太陽の頭が見えました。
太陽の光が辺りに漏れ広がっていて、真っ白な空にオレンジ色の光が広がっていました。
同時に太陽と月を見る事ができるなんて、と久しぶりに心が躍りました。
それからは室内を何度も横断しては、月を見ては太陽の光を眺め、を繰り返し、とても贅沢な幸せな朝を迎えたのです。
そして、偶然なのだろうけれど、トレーの中の列から飛び出したサンストーンとムーンストーン。
素敵な空を見られるよ、と教えてくれたのだとしたらなんだか嬉しい、と思ったのです。
身に着ける機会が無く、大切にしまっているあなたの元に来た石たちも
あなたに触れてもらう瞬間を静かにまっているのかもしれません。
久しぶりに眺めてみてはいかがでしょう。
今回は天然石のお話でございました。
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