多くの人は「たい焼き」をどの部分からパクッと頬張るのだろう。
頭からだろうか?
それとも尻尾からだろうか?
いや、もしかしたら、お腹をぱっくり割って
お腹からという人もいるかもしれないし、
背中からということもあり得る。
福岡銘菓の「ひよこ」はどうだろう。
頭から?お尻から?
誰もが一度は経験するトピックのひとつだろう。
冷たい空気を包んだ日差しが部屋に差し込んでいるある日の午後。
私は、久しぶりに似たような状況に身を置かれ
ポット片手、一人静かに、少し深さのある器の中を覗き込んでいた。
午後の糖分補給に「懐中おしるこ」でもと思ったのだけれども
私がこれから食そうとしていた「懐中おしるこ」は、
昭和初期の型押しで作られている、
ちょっぴりレトロな可愛らしいクマ型をしていたのだ。
大きめの袋の中に色の違う2体のクマが入っている。
昭和初期の型で作られているだけあってよくよく見てみると、
お行儀の良い、ほんのりと時代を感じさせられる渋めのお顔立ちだ。
ピンク色のクマを袋から取り出し、若竹色をしたお抹茶椀に入れ、
先述した状態のまましばらくフリーズしていた。
外国人へ向けてのものなのかは定かではないのだけれど、
どういう訳だか筆書きでポップに丁寧に描かれている食し方を見ると、
あとは熱いお湯を注ぐだけで美味しい懐中おしるこが味わえるのだか
薄い最中の皮が、そう長く熱湯に持つわけがないのだ。
意を決して、熱湯を注ぐ。
お椀の中で、まるで湯船にでも浸かっているかのようなクマの姿を拝めたのは
ほんの僅かな時間だけ。
あっという間に、クマの体はふぃにゃふにゃに溶け変わり果ててしまった。
このような事で一喜一憂する年齢ではないのだけれど、
妙な罪悪感が胸を過ぎるのはどうしてだろう。
説明書に描かれた片腕を挙げたウィンククマが
空元気に見えてしまったではないか。
色々な意味を込めざるを得ない気分のもと、手を合わせてお汁粉を口へ運ぶ。
さっぱりとしてるけれど、
しっかりとした餡の甘さが良い。
そこに、あのクマの抜け殻のようになっている最中皮は、
少し、もちっとした食感があり、いいアクセントになっていた。
このクマは『果匠 正庵』の『くまさんのあったかしるこ』と言うのだけれど、
こちらの商品は、合成保存料や防腐剤を使っていないので
安心して楽しむことができます。
このような可愛らしいお菓子は遊び心があっていいのだけれど、
時にほんの少し、食す人の心を乱すことがあるようだ。
関連リンク:果匠 正庵/渋谷区広尾1-9-20/TEL:03-3441-1822/[月~土]10:00~19:00[日・祝]10:30~17:00