春は寿ぐ機会が多く、気持ちがふんわりと優しく、まあるくなる。
誰かをお祝いする気持ちは、お祝いごとがあった本人だけではなく、自分のことまで温めてくれる。
長い人生の中では、祝っていただくことも、お祝いすることもあるのだけれど、そのような時に「熨斗(のし)袋」を使う機会もあるのではないでしょうか。
今回は、どの熨斗(のし)袋を使うのか、ではなく、『熨斗(のし)袋の中の内袋に金額を記載する際に使う正しい漢数字』のお話です。
冠婚葬祭で使用する熨斗(のし)袋は、普段から頻繁に扱うわけではありません。
また、多くの人の目に晒されてしまうものでもないため、いつの間にか書き方が自己流になってしまうこともあります。
どのようなシチュエーションでの使用であっても、その時々の気持ちを伝える大切なものです。
心をこめて丁寧に自信をもって用意したいですよね。
皆さんもご存知のとおり、熨斗(のし)袋の内袋には名前、住所、金額を書くことがお作法です。
内袋にまで書かなくても分かるでしょう……と思ってしまいがちですが、
これは、相手への気配りと思いやりですので、気心知れたお相手であったとしても書きましょう。
そして、金額を書くときには、大字(だいじ)と呼ばれている旧漢数字を使います。
どうして大字(旧漢数字)を使うのかといいますと、私たちが現在使っているものは略字と呼ばれています。
特別な日だからこそ、略字ではなく大字を使うという理由ですが、
数字を改ざんされないようにする、間違われないようにする、という理由もあります。
実際に使用する旧漢数字はこれです。
一→壱、二→弐、三→参、
四→四、五→伍、六→六、七→七、八→八、九→九
十→拾、百→佰、千→阡、万→萬、円→圓
金額の前には「金」を
金額の最後には「也」をつけます。
ただし、この「也」を付けるのは10万円を超える高額な場合のみに使用します。
実際には、『金壱萬圓』、『金伍萬圓』、『金拾萬圓也』という風に。
文字にも「おめかし」をさせて、その場に相応しい空気を纏わせて送り出すイメージでしょうか。
今回ご紹介したお作法は、毎日の生活の中で頻繁に必要になるお作法ではないのですが、特別な日に気持ちを乗せて届けるお作法のように感じます。
この機会に確認しておいて、次に「熨斗(のし)袋」を使用する際には、旧漢字に気持ちを乗せてみてくださいませ。