寒の戻りに備えて少しだけ残しておいた温かいニットたちも、
さすがにもう出番はないだろうと少しずつ最後のお手入れを施しはじめた。
お気に入りのニットを手洗いしながら
過去の自分の失敗談を思い出して、少し笑ってしまった。
当時から、「とりあえずやってみる」という癖があった私は、お気に入りのニットを手洗いしていた。
この辺りの感覚は既にある程度掴んでいたので問題なく洗うことができた。
軽く脱水をかけようとネットに入れたニットを洗濯機に入れ、20秒程の時間設定をして一度、部屋へと戻った。
部屋に戻ると何か他の事が目に入ったのだろう。
当時の私はニットのお洗濯中だという事を忘れて部屋での作業に没頭してしまった。
一段落して、ニットのことを思い出した私は慌てて洗濯機の前へ行き、洗濯機の扉を開けた。
「・・・・・・」
思っていたよりも軽いニットに嫌な予感がした。
あらかた察しはついたのだけれども、お気に入りのニットだ。
察しが外れていて欲しいと願いながら、恐る恐るネットのファスナーを引き開けた。
「・・・・・・」
肩を落とすという表現があるけれど、あの時の私の後ろ姿といったら、
きっと、その表現がぴったりだっただろうと思う。
20秒の脱水設定をしたはずなのに、20分の設定。
しかも脱水ではなく乾燥設定にしていた私。
冷水で丁寧に洗ったお気に入りの冷たくなったニットは、温かい手のひらサイズのニットに大変身していた。
素材もふっかふかのウールからギュギュっと目の詰まったフェルト生地へ。
もう既に私の知っている、私のお気に入りのニットではない。
人は、想定外の状態が目の前に差し出されると、
漫画のようなリアクションを本当にとってしまうのだな、と思った。
お人形や縫いぐるみのお洋服と言ってもおかしくないサイズにまで縮んでしまったお気に入りのニットを何度も見返し、
「いやいやいやいや、あのニットじゃないでしょう」と行き場のない突っ込みをニットに向けてみたりなんかして。
凹みはしたのだけれども、これも勉強だと項垂れそうな自分に前を向かせた。
しばらくそのニットを眺めていたのだけれど、
当時は何でも可笑しく思えるお年頃だった私は一人、大笑いした。
そして、その小さくなったニットを学校へ持っていき友人たちに披露したのだ。
あまりにも小さくなったニットに、みんな一瞬だけ驚いた様子だったけれど、
こちらもまた何でも可笑しく思えるお年頃ゆえ、
「ほんとだ、これ、柊希が着てた、着てた」と大爆笑となった。
それからしばらくの間、私の小さくなったニットは教室後ろの掲示板に掲示されることとなった。
ちょっとした私の想い出だ。
あの日から私は大切なお洋服を手洗いする時は、干す段階まで目を離すことは無い。
「自宅に帰るまでが遠足」と同じで「干す段階までがお洗濯」だ。
だって、お気に入りのニットが、手のひらサイズにまで縮んだ姿はもう拝みたくはないのだもの。
私のような大きな失敗が無かったとしても、
ウールのニットは洗い方によっては、とても縮みやすい構造をしています。
皆さんも大切なお洋服を縮ませないよう、お気を付けくださいませ。
今回はお手入れ方法ではなく、私の失敗談にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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