昨年の今ごろは、まだ現在の新居に引越したばかりで
ダンボールに囲まれて生活をしていた気がする。
引越一週間前にまだ引越先の家が決まっていないという
慌ただしく無謀なスケジュールだったけれど、
人間、やってみればなんとかなるものらしい。
慣れているとはいえ、無事に移動できたことに心底ホッとし、
しばらく抜け殻のようになっていた私。
そんな私をメールのやり取り越しに感じてくれた友人から
「とりあえず、マグカップを出して、ひと息ついて、キュンとして」
と書かれたメッセージカードとともに
絵本と紅茶とクッキーの贈り物が届いた。
こういう粋な計らいは心に沁みる。
温かい友人の気持ちに、気持ちがゆるゆると解された。
フレッシュでジューシーなフルーツが香る紅茶は、
手早く淹れられるように
敢えて選んでくれたことが分かるティーパックタイプだった。
「だから、メッセージがマグカップなのか」、と
ひとり言を漏らしたような記憶が薄っすらと頭の片隅に残っている。
美味しい紅茶とクッキーの程よい甘さが、
ゆっくりと体に吸収されて体の内側からジワジワと
エネルギーが沸き上がるようだった。
そんな一年前の記憶を辿りながら、
友人が贈ってくれた絵本を久しぶりに広げた。
絵本作家でイラストレーターの『はたこうしろう(秦 好史郎)』さんが
絵を担当されているジュディス・ヴィオースト作の『サウスポー』という絵本。
おしゃれな色使いと優しい絵のタッチに引き込まれた。
絵本のストーリーはと言うと、
表紙の男の子と女の子がお手紙を交換します。
そのお手紙の交換の中で
友情と淡い恋心を行ったり来たりしながら
お互いの気持ちが溶け合っていく過程が描かれた、
ほんのり甘酸っぱいお話です。
大人が読むと、様々な甘酸っぱさにキュンとしたり、
男の子ってこうだよね、女の子ってこうだよね、と共感したり、
応援したくなったり、ヤキモキしたり。
小さなお子さんが読むと、友情を描いたお話だと感じるのでしょうね。
でもいつか、そのお子さんが成長し再びこの絵本を手にしたとき、
絵本の中にホンワカ漂う恋心の機微を感じとれるのかもしれません。
そのような淡い、淡いお話の絵本です。
絵本は読む年齢によって
同じ絵本でも感じとることが出来る内容が変わっていくところが面白いですよね。
また、時間の無い大人でもサクサクっと読むことができるのも嬉しいところ。
心は様々な事を感じると、
それをエネルギーに変えてくれるように思います。
新年度が始まり、ちょっぴりお疲れ気味の方、
あたたかくて素敵な絵本で凝り固まった心をほぐしてみてはいかがでしょうか?