我が家では季節に関係なく「お鍋料理」を食べます。
冬とは違って春、夏は、ついうっかり体を冷やしてしまう事が多いけれど
お鍋料理は、体温調節機能を少し強引に働かせることもできる上に、
お野菜もたっぷり摂ることが出来るので頼りにしているメニュー。
それ以前に「美味しいものは、いつ食べても美味しい」という理由が一番なのだけれど。
季節は冬から春に移り変わり、時折、夏の匂いも混じっているけれど、
相変わらず季節感そっちのけでお鍋の仕込みをしていたときのこと。
ふと、ある食材を手にして過去に抱いたある素朴な疑問を思い出したのです。
今回は、その時のお話をさせていただこうかなと思います。
私はある時、お鍋の食材を準備しながら思ったのです。
和風のお鍋や、中華風のお鍋をする時に
高い確率で投入する「しらたき」と「糸こんにゃく」の違いは何なのだろうか、と。
私の人生の中で、この素朴な疑問は何度か脳内に浮上したことがありました。
始めは白いものが「しらたき」で
黒いものが「糸こんにゃく」だと思ったのですが、
スーパーの陳列棚を覗き込むと、
黒い「しらたき」や白い「糸こんにゃく」もあるのです。
この時点で私は「しらたき」と「糸こんにゃく」から門前払いをくらい、
ちょっとした抵抗も兼ねるような面持ちで、
その隣にある「くずきり」を買い物カゴに入れるのです。
想像だけでは答えにたどり着けないことに気づいた私は、
早々とインターネットという師に教えを乞うてみました。
「しらたき」と「糸こんにゃく」は両方とも江戸時代に誕生したもので、
作り方も形状も異なるものでした。
「しらたき」は、こんにゃくが固まる前のぷるんっとした状態のものを
ところてんを作るような要領と道具で
細い穴から押し出したものをお湯で固めて作っていたようです。
こんにゃくが細い穴から押し出される様子が、
白い滝のように見えたため「しらたき」と名付けられたそうです。
そして、この「しらたき」は主に関東で作られており、太さは2、3ミリだったようです。
一方、「糸こんにゃく」は、主に関西で作られたものでした。
作り方は、しっかりと固まった板こんにゃくを、
人の手で糸のように細く切って作っていたようで、「糸こんにゃく」と名付けられたのだそう。
「糸こんにゃく」は「しらたき」より太く4~8ミリサイズが一般的だったようです。
この時点では、それぞれに特徴があり
素材は同じでも違いが見て取れるものだったようなのですが、
現在は作り方、太さにも大差がないため、
「しらたき」と「糸こんにゃく」の名前だけが残ってりいる状況のようなのです。
関東のメーカーや関東で販売されるものは「しらたき」、
関西のメーカーや関西で販売されるものは「糸こんにゃく」となっていることが多く、
「しらたき」と「糸こんにゃく」の違いは、地域による違いと言われているようです。
とは言うものの、これだけ流通システムが発達していると、
関東にも関西メーカーの商品が、
関西にも関東メーカーの商品が店頭に並ぶことも多く、
地域による違いとも言い切れないように思うのです。
「どちらでもお好きに呼んでくださいまし」という状況なのだけれど
みなさんはどちらで呼んでいますか?
呼び分けされているでしょうか?
そして、ご近所のスーパーに置いてある商品名はどちらでしょうか?
私は、このような状況だからこそ、
白はしらたき、黒は糸こんにゃくでいいのではないかしら?
と一人勝手な事を思いながら買い物カゴに白い「しらたき」を投入しております。
スーパーでこんにゃくコーナーに立ち寄られた際には、
違いが無くなりつつある「しらたき」と「糸こんにゃく」のお話をちらり、
思い出していただけましたら幸いです。
そして、体を冷やしやすい時期だからこその「季節外れの鍋料理」いかがでしょうか?