皆さんは「御霊抜き」というものをご存知ですか?
お墓や仏壇のお引越しの際に行うものというイメージをお持ちの方も多いかと思うのですが、これは、長く住んだ家を取り壊す際や、大きな修繕をする際、美術館や博物館などに展示される仏像などに対しても行われます。
私は、これまで美術館や博物館などに展示されている仏像は、全て御霊抜きがしてあるものだと思っていたのですが、御霊抜きをしていないものもあるのだということを最近知ったのです。
今回は、そのようなお話を少し。
美術館や博物館などに展示されている仏像は、美術品としても貴重で価値のあるものですが、元はお寺などで仏像本来のお役目を担っていたものです。
しかし、仏像も初めから本来のお役目を担っていたわけではなく、仏像になる以前はただの木材でした。
仏師(ぶっし:仏像を作る専門職人)が木材を掘り、仏像の姿ができあがります。
そして、この仏像の姿をした木材を真の仏像にするために、僧侶が開眼供養というものを行い特別な御霊を入れてはじめて、多くの人から手を合わせられる真の仏像になるのだそう。
ですから、お寺などにある仏像には魂が宿っているわけです。
私たちだって何の断りもなく寝ている間に手術台に乗せられたり、引越しさせられたりすれば戸惑うのと同じで、この真の仏像に何の断りもなく体を分解して修繕をしたり、場所を移したりしますと仏像だってびっくりしますよね。
中には怒り出してしまう仏像が居るやもしれません。
ですから、仏像は修繕をする前や美術館や博物館などで展示する際には、「御霊抜き」というものを行います。
お経をあげて仏像に理由をお話しして、しばらくの間、仏像の中から出て仏様の世界へ里帰りしておいてもらうようなイメージでしょうね。
その間は仏像の中には御霊が入っていないので、美術品となり、作業される方も修繕作業に集中できるという訳です。
再びお寺に祀る際には、もう一度、開眼供養というものを行い、里帰りしていた魂を呼んで仏像の中に入っていただくようです。
このようなことが行われておりますので、私はてっきり美術館や博物館に展示されている仏像は全て御霊抜きがされているものだと思い込んでおりました。
芸術の秋でもあります。
様々な理由や経緯があるようですが、美術館や博物館、旅先などで仏像と顔を合わせる機会がありましたら、このような視点から仏像を鑑賞してみてはいかがでしょうか。
中には魂の入ったままの状態の仏像と美術館や博物館で顔を合わせる貴重な機会があるかもしれません。
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