先日、空いた時間を利用してぷらりと帽子専門店へ足を踏み入れました。
帽子は、いつもの装いにプラスするだけで、
全体を引き締めてくれたり、雰囲気を変えてくれたりする優れものです。
何か心踊るような帽子はないかしら?と新たな出会いを求めていた時のこと、
こっくりと深い赤ワインのようなバーガンディーカラーのベレー帽を被った女性が店内に入ってきました。
その女性が被っていたベレー帽は、シンプルでトラディショナルなバスクベレー帽。
仰々しさが無く、帽子が彼女に寄り添っているかのような着こなしがとても素敵だったのです。
トレンドも気になるけれど、その域を越えて好きなものや自分に合うものを、
自分らしく堂々と着こなしている女性は、
いつの時代も年齢を問わずキラキラしているものなのだと感じた瞬間でした。
そう言えば、ベーシックなベレー帽のことをバスクベレーと呼びますが、
このバスクはフランスとスペインの両国にまたがっているバスク地方のこと。
ベレー帽の発祥の地がバスク地方であることから、
「バスクベレー」と呼ばれています。
元々は、聖職者が被っていた角帽がバスク地方の農民の間で広がり
少しずつ形を変えてベレー帽になったと言われています。
角帽は、帽子の上の部分がひし形になっているものです。
ベレー帽の愛用者は農民だったので、
ベレー帽は日常生活の中で日除け、風除けといった用途で重宝されていました。
それがどうして、おしゃれアイテムにまでなったのか。
ある時、ナポレオン3世※がこの地を訪れ人々が被っているベレー帽を見て
「ベレー・バスク」と呼んだことをキッカケにして、
フランスやスペイン、そして世界中に広まっていったのだそうです。
※このナポレオン3世は、フランス革命の終結を宣言したことや、馬に跨った絵画や、ダリアでお馴染みのジョセフィーヌを妻に持っていたことで同じみのナポレオン1世の甥です。
その間、ベレー帽は改良されたり、手を加えられたりしながら
様々な形状のものが流通するようになるのですが、
ある時期までベレー帽は男性だけのものだったようです。
女性が被るようになったのは1920年代に入ってからで、
初めはスポーツ用の帽子として登場したのだとか。
しかし、ココ・シャネルなどのデザイナーによって、
スポーツ用だけではなく女性のファッションアイテムとしてのベレー帽が広まりはじめ、
現在に至るようです。
ベレー帽はとてもシンプルで頭の形を選びませんので
幅広い方に似合いやすく、被りやすい帽子なので長年愛されているのかもしれませんね。
数年前にナポレオン1世の有名な「二角帽」がオークションにかけられたのですが、
確か日本円にして約2億7000万円で落札されたと
ワールドニュースで取り上げられていたように記憶しています。
ナポレオンは皇帝時代にパリに在る帽子屋に数多くの帽子を作らせたのだそう。
あの二角帽は通常、縦向きに被るものだったようですが、
ナポレオンは横向きの方が目立つのだと横向きに被っていたのだそうです。
私たちはその絵画を何の疑問も抱かずに見ていると思いませんか?
男性、女性を問わず自分らしく堂々と着こなしている姿は、
いつの時代もトレンドをも越え、
本人らしさが素敵に解き放たれるのかもしれません。
今日も自分らしい装いを楽しんでくださいませ。