時々、パエリアが食べたくなり作るのだけれども、その度に思い出すことがあります。
ある日、ポットラック※ではないホームパーティーの主催者のお手伝いをすることになりました。
※ポットラックは「持ち寄り」の意味なので持ち寄りパーティーを「ポットラックパーティー」と呼んだりします。
その時にパエリアを作ったのですが、柊希は邪道なパエリアを作るのね、と指摘されたのです。
私がよく作るパエリアは山の幸のお肉と海の幸の魚介を入れたミックスタイプの
パエージャ・ミスタと呼ばれるものなのですが、これは比較的新しいタイプのスタイルのようなのです。
それ故、パエリアを伝統料理という視点で見ると邪道だと感じる方もいらっしゃるのだとか。
スペインの街中にあるお店にもパエージャ・ミスタを扱うお店は多々あるけれど、
そう感じる方がいらっしゃるという事実があるのなら、
世の中を知るいい機会だと思い「(美味しいからいいじゃない)」、
という自分の声をほんの少し脇へ置き、
伝統という視点のお話をホームパーティーの準備をしながら聞かせてもらいました。
パエリアは大きく2つに分けられ、
ひとつは、お肉をメインにした山の幸のバレンシア風パエリア、
もうひとつは、海の幸をメインにした漁師風パエリア、それ以外は邪道だというのです。
単純明快すぎる内容に、どこの国でも伝統を守ることや、時代の波に乗りながら伝統を守ること、
そのような狭間で各々の想いが行き交うことがあるのだろうな、と感じました。
そして、勝手ながら私は、美味しくみんなで食べられることが一番だという思いが先に立ち
この時の会話を思い出しつつも、作るのはパエージャ・ミスタです。
そして、パエリアに欠かせないものと言えば、
花のめしべを乾燥させた着色と香り付けに使う香辛料のサフラン。
古から質の良いサフランの産地として知られているのは、
スペインのトレドの南、ラ・マンチャ地方※に在るコンスエグラという町で、
サフランのお花はこのようなお花です。
※この「ラ・マンチャ地方」はドン・キホーテを元にしたミュージカル作品『ラ・マンチャの男』のラ・マンチャです。
あのサフラン色に染められて炊きあがったお米を見ると食欲をそそられますよね。
皆さんはあのサフランを作るために、どれほどのサフランのお花が必要か、ご存知でしょうか。
吹けば飛ぶ約1gのサフランを作るために必要な花の数は約300本、
使われるめしべの量は約1000本だと言われています。
しかも、細かいめしべはすべて手摘みなのだそうです。
とても希少価値の高いものであることと同時に、サフランの花は夜中に咲くため、
早朝に中腰の状態で手作業しなくてはいけません。
ですから、古から高値で売買される香辛料でした。
現在はリーズナブルに入手できるサフランも時々みかけますが、
それでもこの希少価値は変わっておらず高価な香辛料のひとつです。
最近ではサフランを栽培し、採取する農家が減少しているようなので、
希少価値はこれから上がっていくのかもしれませんし、
サフランを使ったお料理を食べられる機会がぐっと減ってしまうこともあるのかもしれません。
お手伝いで作ったパエリアをきっかけに知ったお話したちなのですが、
私にとってはパエージャ・ミスタが邪道だといわれることがあるということよりも、
サフランが高価な香辛料である理由の方が腑に落ち、興味深かったのでした。
もし、パエリヤやカレーを召し上がる時のライスが素敵に黄色く色づいていたのなら、
貴重なサフランの色や香りや味を存分に味わってみてくださいませ。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/