我が家のお正月休みは世の中から少し遅れてやってくるのですが、
大晦日の夜と元日くらいは、しっかりと旬であるお正月気分を味わうべく、少しずつ様々な準備をしております。
そのような時に、お世話になっている遠方にあるチーズショップから
年末年始に楽しむことができるチーズのラインナップメールが届きまして、
顔なじみのショップの方がご紹介くださった中から、大晦日に届けていただくチーズを選ぼうとお店へと足を運んだのです。
その際に、「足が早い(速い)」という言葉を使うこと、ありますか?と尋ねられたのですが、
店頭での接客中に使ったところ意味が通じなかったという事が最近続いたのだとか。
そこで、どうしてそのようなことが起きているのか興味があり、顔なじみの方々に聞いているとのことことでした。
これ、私の周りでも随分と遠い過去ですが、話題にあがったのです。
意味は知っているので相手が使えば意味は理解できるけれど自分は使わないという人。
自分も使うという人、
使ったことも聞いたこともないけれど、どういう意味?という人とおりまして、
不思議な存在の言葉だという話になったのです。
ここで言う「足が早い(速い)」と言うのは主に、
食材の消費期限が短いこと、食材が腐ってしまうことを意味しています。
(※言葉そのものには他にも「商品の売れ行きが良いこと」を指す場合もあります。)
語源は様々ですが、
よく耳にするのは古の漁師たちが漁で使う舟のことを足に例えていたというもの。
漁に安心して出ることができる丈夫な舟のことを足が強いと表現し、
反対に強度に不安要素があるような船のことを足が弱いと表現していたのだそう。
漁師繋がりでしょうね。
漁で獲った魚の中には腐りにくい魚と腐りやすい魚がありますが、
腐りにくい魚は足の遅い魚と呼ばれ、腐りやすい魚は足の早い(速い)魚と呼ばれるように。
人間の足は動作や変化する様子を連想させるため、新鮮な魚が劣化し腐るまでの変化、時間経過を捉えて、
足が早い(速い)と言う慣用句として漁師間を飛び出し、日本中に広がったのではないかと推測されているようです。
これがいつの頃からなのか定かではありませんが、魚に限らず生もの全般に使われるようになっております。
だけれども、歴史もそれなりにある言葉であるにも関わらず、年齢を問わず、使う人は使うし、知っている人は知っているけれど、
知らない人は知らない、使わないという状況が割とはっきりと分かれているようなのです。
時代色豊かな言葉であれば、年齢(時代)によっては全く知らない世代や地域もあり得るのですが、こちらは年齢(時代)や地域といった基準の目安がありません。
人は何をキッカケにしてこの言葉を知るのか、使うようになるのか。
このような意味で過去にも不思議だと感じた言葉だったのですが、久しぶりに同じことを感じた瞬間でした。
私は差し上げるもの、贈り物など相手の手に渡ったものに対して
「腐る」という言葉を使うのは少々表現がストレートすぎる印象を持っているからなのか、
「足が早い(速い)」と「傷みやすい」の表現を相手や贈り物の内容によって使い分けているように思います。
皆さんは、「このお菓子は足が早い(速い)から」、「このお魚は足が早い(速い)から」という言葉を使いますか?
機会がありましたら、普段とは異なる表現を楽しんでみてはいかがでしょう。