中途半端に空いた時間を使って近所の猫カフェへ行ってみることにした。
ドインクを手にソファーに腰を下ろすと少し離れた所からこちらを見ている猫と目があった。
「あの膝で暖でも取るか」
「どうぞお好きに」
私たちは、そのような、テレパシーにも似たやり取りを無意識下で交わしたのかもしれない。
その猫は遠慮する素振りを見せることなく私の太ももの上に乗り、
自分にとっての心地よい体勢を探し始めた。
私も同時に自分の心地よい体勢を探そうと体を動かすと、
その猫は私を見上げて「みゃー」とひと鳴き。
「もうっ、そんな風に動くなよ。定まらないだろ」そんな風にも聞こえて笑ってしまった。
互いに体制が落ち着きのんびりと過ごしていたのだけれど、
気ままに過ごしている猫たちを眺めていたら、ふとライオンの話を思い出した。
ライオンはネコ科の動物なのだけれど、
ネコ科の中で唯一、群れを作って生活をする動物だったなと。
皆さんはご存知でしょうか、ライオンの群れにある厳しい掟のことを。
ライオンは1~5頭ほどのオスと複数の雌、その子どもたちで
ひとつのチームを作って生活しています。
もちろん雄がリーダーなのですがリーダーは、
このリーダーの座を狙うチーム内外の雄から戦いを挑まれます。
そして、リーダーの座をかけた戦いの勝者がチームを率いて暮らしていきます。
と、ここまではよく耳にする構図なのですが、ライオンには掟があります。
それは、新リーダーはチーム内に居る旧リーダーの子どもを殺すというもの。
これは、雌ライオンは自分の子どもが一人前になるまでは子どもを産まない習性があるので、
新リーダーが自分の子孫を残すためには、
旧リーダーやチーム内の雄の子どもたちを殺すしかないのだとか。
そして、雌ライオンたちは生きていくために、
我が子が殺されるのを黙って受け入れるしかないと言われています。
しかし、近年の調査では自分の子どもを守るために
敢えて子どもを連れてチーム(群れ)を抜け、
厳しい環境下で子育てを行うことを選ぶ雌ライオンが居ることが分かっているのです。
テレビなどでも取り上げられる機会が増えているので
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
「野生動物の掟」と聞くとそれ以外の道は無いようなイメージがありますが、
どのような世界にも「愛情」や「自分の未来は自分で決める、選ぶ」という
強い意志は存在するのだなと思いながら、
長閑に横たわっている猫たちを眺めておりました。
猫を乗せたままの体勢が辛くなった私は、
「ちょっと退いてくれませんか?」の意味を込め、
猫の背中をトントンと叩いてみるも、チラリこちらへ視線を流すだけで動く気配はなし。
私の目の前にも、ある意味強い意思のようなものを感じた穏やかな午後でありました。