駅構内にあるエスカレーターに乗り、
「(風が無ければもっと暖かいのに)」そのようなありきたりなことを思いながら
ガラス越しの景色をぼんやりと眺めていた。
すると背後からドシドシドシッと重みのある足音が聞こえ、
足音の主は私の目の前のスペースに入り込んできた。
足音のイメージ通り大柄な外国人男性だった。
旅慣れている様子の彼の背中のリュックサックは、
全てが詰め込まれているのだろうと推測できるほど膨らんでいた。
彼が体を動かす度に聞こえるシャラシャラという音が気になり音の出所を探していると
リュックサックの上部脇に付けられた招き猫の姿をした鈴に目が留まった。
「(どうして……。)」
近年、海外でも招き猫が人気だとは聞いていたけれど体感できずにいた私は、
あながち間違ってはいないのかもしれないと思った。
そこには親指の第一関節程の大きさのカラフルな招き猫が十数体つけられていた。
少しずつ顔つきやサイズ感が異なっているところを見るに、
少しずつコレクションしているのかもしれない。
招き猫と言えば右の前脚をあげているものはオスの猫で幸運や金運を、
左の前脚をあげているものはメスの猫で人のご縁やお客様を招くと言われています。
時々、どちらも招くことができるようにと両手をあげた招き猫も見かけますが、
その様子が「お手上げだ」と言っているようにも見えるということで
賛否両論あるのだとか。
色に関しても先日お話させていただいた「ダルマ」のように、
特に欲している運気によって選ぶことができるようになっており、
選ぶ楽しみも人気のひとつなのかもしれません。
皆さんは招き猫の発祥をご存知でしょうか。
発祥のお話が残っているところはひとつではないのですが、
今回はよく耳にするものをひとつ、ご紹介させていただこうと思います。
時は江戸時代だったようでございます。
現在の東京都内にあったという、とあるお寺に猫好きの和尚さんがおりました。
ある時、和尚さんは猫を可愛がりつつ、
「お前に恩が分かるかのう?分かるのであれば何か幸運を招いてはくれぬか?」と呟いたのだそう。
そのような呟きも忘れた頃、お寺に立派な武士の方々が訪ねてきました。
武士たちの話によると、
お寺近くにある大木の下で雨宿りをしていたところ、
この猫が私たちに手招きをするものだから寄らせてもらったのだと。
和尚さんは武士たちを快く向かい入れてお茶などでもてなし、
しばしお話をしていると雨も上がり晴れ間が広がりました。
武士たちはお礼を言ってお寺をあとにしたのですが、
後に、当初武士たちが雨宿りをしていた大木に雷が落ちていたことを知るのです。
あのまま雨宿りをしていたら命を落としていたはずなのに、
お寺の猫の手招きのおかげで命が助かったと、とても喜び猫に感謝したのだそう。
その時の武士というのは、現在、ゆるキャラのひこにゃんでもお馴染みの彦根藩城主、井伊直孝。
井伊家は、命の恩人(猫)でもある、お寺の猫が死んだ時、猫の墓を建て供養しました。
その後、幸運を招いたこの猫の姿を人形にしたものが
私たちの知る招き猫の元となったようでございます。
時々、招き猫や縁起物を買ってみたけれど何も起きなかった。
というような話を耳にするのだけれど、
わたくし、災厄を除けてもらえたから穏やかに過ごすことができた(何も起きなかった)。
と思える方が「人生を楽しめている」という気持ちが
ちょっぴりアップするように感じるのですがいかがでしょうか。
今日もきっと様々ありますが、「るん♪」とした気持ちでまいりましょうか。
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