「寒いというより……、冷たいっ、冷たいっ、冷たいっ」
そう言ってリビングで朝からぴょんぴょんと数回ほど飛び跳ねてみたのですけれど、
それくらいではビクともしませんね、この冷たい空気は。
これほどにも冷え込んでいるのだから雪でも降るのではないかしらと、
ミルクをたっぷり使ったホットココアを手に窓の外を眺めておりました。
誰もが知る「雪」ですが、この雪を表す言葉もとても多く存在しております。
時々、このような季節感のある言葉にフォーカスしてお話させていただいておりますが、
今回は、あなた好みの言葉を選びながら、
あなた好みの雪景色を脳内キャンバスに描いてみる。
このような雪遊びはいかがでしょうか。
「雪」を表す様々な言葉から移り行く冬の景色を眺めてみてくださいませ。
日常の空気が秋の匂いから冬の匂いに変わり、
冬の装いが体にも馴染んできた頃、その時季に初めて降る雪を「初雪(はつゆき)」と言いますね。
この初雪が例年よりも早く降ったのなら、
同じ雪だけれどこの雪は「早雪(そうせつ)」と呼ばれます。
この初雪や早雪が山に降り積もれば耳慣れた「初冠雪(はつかんせつ)」です。
降る時季と場所でこんなにも呼び名が変わります。
そして、この雪が降る様子を表した言葉の繊細なこと。
先人たちは、雪が降る美しさを花のようだと感じたのでしょう。
雪の美しさを表すために生まれた「雪花(せっか)」という言葉があります。
大きな花びらにも似た雪花が舞う時、
その大きな雪を「花びら雪」、「牡丹雪」、「綿雪」などと呼ぶことで、
その美しさをよりリアルに表現しようとしたようです。
これだけでも、なんて豊かな表現なのだろうと思ってしまうのですが、
先人たちは、この季節だけに見ることができる景色をより繊細に、鮮明に表現しようとします。
雪に馴染みがある方は雪の質感も降り方も様々であることをご存知かと思いますが、
雪の粒が小さく繊細な雪のことを「細雪(ささめゆき)」と呼び、
小説や歌の歌詞の世界で登場することの多い、
粉のようにサラサラとした雪のことは「粉雪(こなゆき)」と呼び分けられます。
これらの積もりたての新しい雪のことは「新雪(しんせつ)」と呼び、
薄く積もったけれどすぐに溶けてしまった儚い雪は「淡雪(あわゆき)」と表されます。
また、このような雪が降る時季におめでたいお祝い事があった時、
その時に降る雪は「瑞雪(ずいせつ)」と呼び、吉兆のしるしとされております。
結婚式などのスピーチをされ日に雪が舞っていたのなら、
このような吉兆のしるしの言葉をさり気なく盛り込みますと、
季節感とお祝いの気持ちを込めることができ、
粋なスピーチになるのではないかと思います。
さて、皆さんのキャンバスには初雪から始まり、
様々な雪が降りはじめているかと思いますが
その雪が積もった様子を表す言葉もたくさんあります。
耳慣れた言葉では、「雪化粧」や「銀世界」といった言葉がありますが、
木々に積もっている雪のことは歌の歌詞にもあるように、「綿帽子」をかぶとも言いますね。
真っ白な雪がキラキラと光を放つ様子は「雪あかり」とも表現されますが
色が無くなる冬の景色がパッと華やぐような気持ちにさせられます。
また、雪がどこからともなく風に運ばれて花のように舞う姿を「風花(かざばな)」と言います。
多分、風花という文字だけを見ると
桜が舞うイメージを抱かれる方も少なくないと思うのですが、
こちらは雪を表す言葉なのです。
表情豊かに舞う雪が積もる季節も時が来れば次の景色へと移り変わります。
その時季最後となるであろう雪のことを、
「雪の別れ」、「終雪(しゅうせつ)」、「雪の果て」と呼び、
先人たちは雪景色を最後まで大切に味わいきろうとしていたようです。
このような言葉に触れてみますと、
カメラが無い時代は言葉でシャッターを切り、
その景色を残したり、伝えたり、繋いだりしていたのかもしれません。
このように雪を表す情緒あふれる言葉をご紹介させていただきましたが、
雪国でお過ごしの方は雪の魅力や美しさ、儚さだけではなく、
雪が持つ力強さや恐ろしさ、
雪と共に過ごすことの厳しさや不便さも同じくらいご存知かと思います。
モノゴトは様々な表情を持って存在していますので、
それを自然を通して体感されているのかもしれませんね。
私は、雪景色の美しさに魅了されつつ、そのようなことを思う今年の冬を過ごしております。
雪が身近な方も、そうでない方も、
「雪」を表す言葉から移り行く冬の景色を眺めつつ、
冷たくて暖かい冬をお過ごしくださいませ。