暗い夜道を歩いていると目の前に、それはそれは素敵なクレセントムーン(三日月)が浮かんでいた。
お月様が究極まで欠けた、細くて大人びた艶のあるクレセントムーン。
本来、お月様は欠けてなどいないのだけれども、
勝手なもので欠け始めただの、満ちはじめただの言いながら空を仰いでいる私がいた。
深い空に凛々しく浮かぶ月を眺めながら歩いていると、何処からともなく沈丁花の香りが風に乗って運ばれてきた。
少し早咲きだろうかと思い辺りを見渡してはみたものの、沈丁花の姿を捉えることはできなかった。
クレセントムーンに沈丁花の香り。
特別な映画やスペシャルなパフュームを楽しむのもいいけれど、
暗い夜道で味わう月と花の共演もいいものだと思った。
沈丁花は春になると淡いピンク色の小さな花を咲かせる。
私たちが花びらだと思っているものは「がく」らしいのだけれども、
小さな花が全て開花した様子は小さな鞠のようで愛らしいと思う。
そして、こんなに可愛らしい姿をしているにも関わらずシャープな印象を漂わせているのは、
きっと先端がキュッと尖った「がく」のなせる業。
「わたくし、カワイイだけじゃなくってよ」と言われているようで、
そのようなところも沈丁花の魅力だと思っている。
日本には三大香木と言われている香木がある。
夏に咲くクチナシ、秋に咲くキンモクセイ、そして、この春の沈丁花だ。
沈丁花の中には非常に豊富な香り成分が含まれているため香りが強く、長時間香ることもできるため、
花の中では一番遠くまで、その香りを届けることができると言われている。
アロマオイルの勉強をしていたとき、
沈丁花は香水の成分としても使われているにも関わらず、
アロマオイルが無いことを不思議に思ったことがあった。
詳しく聞いてみたところ、正しく使えば薬効のある植物だけれども、
そのままでは花びら、樹皮、根など丸ごと毒性のある植物だったのだ。
ゆえに、成分を安定させることが困難であることが理由で、沈丁花のアロマオイルは販売されていないのだという。
やはり、沈丁花は一筋縄ではいかないようだ。
ふわり沈丁花の香りに遭遇されました際には、
この季節にしか楽しむことができないフレッシュな春の香りをご堪能あれ。
※これからの季節、道端に沈丁花の花が落ちていることもあります。ペットお散歩時やご自宅に沈丁花を飾られる際には毒に十分にご注意下さいませ。
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