イギリスに住む知人が、このようなことを尋ねてきた。
日本には、ピカチュウやキティーちゃんのベントーボックスは売ってる?と。
私は高校を卒業してからはお弁当箱とは無縁なので、詳しくは知らないけれどバラエティーショップなどへ行けばあるのではないだろうかと答えた。
イギリス人の彼女からお弁当箱の話がでるなんて、と驚いてしまった。
と言いうのは、イギリスではお弁当のことをランチパックと呼ぶのだけれども、日本のお弁当に慣れている者にとっては、これが、それはそれは驚きの代物なのだ。
一般家庭で作られているポピュラーな組み合わせをご紹介させていただくと、薄切りパンにスライスチーズだけが挟んであるもの(ソースの類はなし)、または、薄切りパンに薄切りハムが挟んであるもの(ソースの類はなし)。
バナナやリンゴなどのフルーツが丸ごとひとつ、もしくは、ドライフルーツ少々。
紙パックジュースがひとつ(100%とかではなく、ジャンキーなジュースであることが多い)。
ミニサイズのクリスプ(ポテトチップス)が一袋。
キュウリや人参、セロリなどのスティック野菜ドレッシングはなし。
こういったものが、ラップなどに包まれた状態でスーパーのレジ袋のようなものに入れられている。
茹で卵とリンゴ1個という組み合わせも良く目にしたように思う。
とにかく、味気ないったらありゃしないラインナップで、あまり大きな声ではいえなけれど、初めて、これがお弁当だと言って渡された時には、「ウサギさんのご飯かしら?」と思ってしまったくらいだ。
イギリスでイベントなどに参加するとランチパックが付いていることがあるけれど、そのような所で手にするランチパックも大差はない。
そして、クリスプと呼ばれる厚切りで歯ごたえのあるポテトチップスが入っていることが多いのだけれども、お菓子というよりは野菜という位置づけで加えらていることにも驚かされる。
ランチパックを食べる時の私は、あまり気が進まない顔をしていたのかもしれない。
友人たちが私に、一度、日本のお弁当を作ってみて欲しいと言った。
卵焼きや唐揚げ、タコ型ウィンナーにプチトマトや茹でブロッコリーとおにぎりと言ったシンプルなお弁当を作ったことがある。
すると、彼女たちは、日本人女性は朝からこんなことをしているの?と仰け反った。
きっと、あの時、キャラ弁などを目にしていたら、仰け反るどころかひっくり返ったのではないだろうか。
そのようなお弁当事情が板についている友人からの問い合わせ。
今更彼女が、日本スタイルのお弁当を作るとはどうしても思えなかったため、私は理由を尋ねてみた。
すると、日本のマンガやアニメに夢中になっている親戚の子どもに、作品の中に登場する日本のお弁当を食べてみたいと懇願されているのだという。
そこで、随分と前に私が作ったお弁当を思い出し、似たようなものを作って日本のお弁当箱に詰め、その子のお誕生日のプレゼントにしようと考えているのだと言っていた。
日本のお弁当は、見た目がきれいなだけではなく、栄養の面から見てもとても良く出来ていることに気付かされたイギリスのお弁当事情。
私たちにとっては当たり前のような日本文化に魅力を感じる人々が増えている一方で、先日もちらりと触れた日本の子どもたちの味覚に変化が出始めている日本の食育事情がある。
家族の為、大切な人の為、お客様の為にお弁当を作っている方、実は自分で思っている以上に世界に誇れることをしています。
そして、お弁当を作ってもらっている方や、お弁当を利用する機会がある方、日本のお弁当を食べることができるということは、お国柄も関係しているとはいえ、とても幸せなことです。
お弁当ひとつからも、様々な景色を見ることが出来るものですね。
そして、弁当(ベントー)という日本語は、着々と英語としての顔を定着させているようです。