幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

ジュリアス・シーザーよ、またしても、あなたなのね。

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美味しそうなサーモンの切り身が手に入り、どう調理してくれようかと眺めていると、

ある日の出来事を思い出した。

週に一度だけ、ボランティアでイギリスの小学校へ書道を教えに行っていたことがある。

そのことがきっかっけとなり、プライベートでも学校の先生方と交流をするようになった。

交流と言ってもパブでお酒を1、2杯飲みながら、

どこにでも転がっているような話をするだけなのだけれども。

しかし、当時の私にとっては、そのような時間もとても貴重で全神経を集中させていたのだと思う。

自分の部屋に戻ると頭の先から足の先までクッタクタということも少なくなかった。

 

ある時、あまり仕事の話はしない彼らが歴史の授業をするから観に来ないかと誘ってくれた。

小学校低学年の子どもたちがグループに分かれ、

歴史上の人物の面白いエピソードをまとめ、好きなスタイルで発表するのだという。

きっと私が、時代を追って見る歴史にはあまり興味を感じないけれど、

人物やモノゴトから当時を覗き見することには興味がある、

といった内容のことを、いつぞやかのお酒の席で言ってしまったのだと思う。

「西洋の歴史上の人物の面白いエピソードを知ることができるわよ」と言われてしまった。

一斉に10個の目玉にロックオンされてしまったら断れないじゃないか……。

と思いつつ“何ごとも経験”と自分の背中を自分で押し、見学させていただくことにした。

 

当日は、教室の中を歩き回りながら小学生たちの作業を眺めていたのだけれど、

ある女の子が私を自分のグループに招き入れてくれた。

彼らは大きな模造紙に魚を食べる男性の絵を描いていた。

誰なのかを尋ねると口々にシーザーだという。

私がそう聞いて真っ先に浮かぶのは彼しかいない。

彼と友達でもないのに「ジュリアス?」と返すと、そうだと言う。

その彼、ジュリアス・シーザーが魚を食べているシーンをわざわざ描いているのは何故なのか。

それこそが、彼らが目を付けているポイントだったわけなのだけれども、

女性に人気のある魚、サーモン(鮭)の名付け親が彼だと言うのです。

素で驚いたリアクションがお気に召していただけたのか、

グループの中の男の子が絵を指さしながら話してくれました。

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サックリと簡単に要約すると、こうでした。

ある遠征中、シーザーたちは川沿いに陣を張っていたんですって。

そしてその時、産卵の為に川を上っていく鮭たちの姿を目にしたと言います。

シーザーは、決して諦めることなく、厳しい川の流れに逆らって登っていく姿に感動し、

「跳んでる!跳んでるよ!」と興奮混じりに叫びながら魚たちを見ていたのだそう。

感動したとは言え、相手は魚。

シーザーは、その魚を捕まえて食べてみました。

すると、とろけるように美味しく、あっという間にその魚の虜になったといいます。

遠征を終えてローマに戻ってからも、その魚の美味しさが忘れられず、

雪で凍らせるなどの加工を施したものを届けさせ、ローマでも食べていたといいます。

この魚を目にしたシーザーが発した「跳ぶ」と言う言葉はラテン語で“salire”と言うのだそう。

ここから、この魚は“salmo”と名付けられ、

これが英語では“salmon(サーモン)”となったとのことでした。

幸せのレシピ集内でも時々登場するジュリアス・シーザーですが、

本当に、ピンからキリまでのエピソードをお持ちです。

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そして、子どもたちにサーモンメニューで何が好き?と尋ねられ、

「フレッシュ(生、刺身)が一番ね」と答えた私。

魚を生で食べるなんて信じられない、という環境で育っている幼き彼らを、

ついうっかり、一瞬にして凍り付かせてしまった遠い日の良き思い出です。

サーモンを召し上がる機会がありましたら、

シーザーの興奮混じりの叫びを想像するもよし、

引き攣った子どもたちの顔を想像するもよし、

本日のお話をあなた好みに調理し、味わっていただけましたら幸いです。

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