幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

ちょっと怖い「いちまさん」にフリーズさせられた日。

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何だろう、この居心地の悪さは。

電車に揺られながら、通路を挟んで向かい側の席からこちらを見ている彼女の姿に

久しぶりに背筋にひんやりとしたものを感じた。

その「彼女」というのは、

向かい側の席に座っている男性が着ているTシャツにプリントされていた女性なのだけれど、

皆さんも一度は見聞きしたことがあるであろう、

着物を着た、おかっぱ頭の少女の人形だったのだ。

知らぬ間に髪の毛が伸び続けているなどといった

ゾッとするエピソードを多数お持ちのお菊人形を模したようなお人形の写真が、

電車の揺れに合わせて絶妙に上下しており、

正面を向けば嫌でも彼女と目が合ってしまうのだ。

どうして、そのTシャツだったの?

Tシャツの主に心の中で問いかけたが、もちろん、返事が返ってくるはずもなく、

冷房の程よい心地よさを堪能するかの如く、

彼はスヤスヤと眠っていらっしゃった。

 

私は、自分の思考と勝手に広がり行く脳内劇場を

ホラー寄りからニュートラルな状態に戻そうと、

「いちまさん」などと呼ばれて親しまれてきた市松人形のことを思い返すことにした。

元々、このようなお人形は子どもの無病息災を願うもので、

子どもに降りかかる災厄を身代わりとなって引き受けてくれるお守りとして

大切にされ、お嫁入りの道具としても扱われてきたといいます。

私たちがよく知る着物を着た、おかっぱ頭の少女のお人形は、

江戸時代中期頃から子どもたちに着せ替え人形として人気があったもの。

市松模様の着物を着て売られることが多かったから市松と名付けられたとか、

歌舞伎役者だった佐野川市松にお顔が似ていたから市松と名付けられたとか、

当時は、市松という名前の子どもたちが多かったから市松と名付けられた、

といった様々な説が残されているという。

 

これが時代と共に在り方を変え、

今度は、お雛様と一緒に3月3日の節句の時に飾るようになります。

もちろん、意味があってのこと。

お雛様の「お出迎え人形」として、ひな壇の左右に、

男の子と女の子の市松人形を一対飾って、

3月3日の節句を華やかで賑やかに、お祝いするようになったのだと言います。

もちろん、子どもの無病息災や災厄除けの願いを込めて。

ただ、日本ではお菊人形のエピソードがあり、

私の様に過去に目にしたメディアのホラー企画のイメージが

記憶に刻まれている方も少なくないのだそう。

そこで、現在の市松人形のお顔立ちや表情は、より子どもらしく、

髪型は、ポニーテールやシニヨンなどが取り入れられ、

お人形が怖いものにならないよう、配慮されているのだと

以前、ひな人形売り場の方に伺ったことがある。

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「本来は、子どもの無病息災を願う市松人形だ。

ほらね、怖がる必要はないじゃない。」

そう自分に言い聞かせたのだけれども、つい、怖いもの見たさに、

意図的に怖い演出を施された向かいの座席で上下に揺れる「いちまさん」へ視線を向けてしまった。

そして、努力の甲斐も空しく私は彼女に再びフリーズさせられるのだった。

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