幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

ところてんをお箸一本で!?

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甘味処の前を通り過ぎ、今年の夏は「ところてん」を口にしていないことに気が付いた。

華美な装いのSNS映えするスイーツに注目が集まりやすい昨今だけれども、

ツルツルッと口の中に入り込み、

体の中をほんの少しだけ涼やかにしてくれる「ところてん」。

カロリーオーバーという名の罪悪感と対峙しなくて済むところも

甘い気分?さっぱり気分?と、こちらに最終判断を委ねてくれるところも含めて、

その控えめさがいじらしいではないか。

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ところてんは、テングサやオゴノリと呼ばれる海藻を煮溶かして出た成分を冷やし固めたもの。

確かに姿はあるし掴むことも食感を楽しむことも出来るけれど、その9割以上が水分。

当然、良くも悪くも、栄養なんてありゃしないじゃない、と言われたりもするのだけれど、

栄養は持ち合わせておりませんが腸内お掃除はお任せくださいませ、

という、ところてんの控えめながら凛とした声が聞こえてきてもおかしくないくらい、

食物繊維は豊富だ。

この「ところてん」、時々、お箸一本で召し上がっている、ご年配の方を目にすることがある。

とても珍しい光景で、初めて目にした時には

「どうして?」「何ごとかしら?」「店員さん、だれかお箸を出して差し上げて」

などと思ったような気がしている。

 

ただでさえ、掴み難いところてんを、どうして、お箸一本で食べるのか。

諸説あるようなのだけれど、私の遠い記憶に残っているのは、こちらのお話。

当時の江戸では、お箸が貴重だったのだそう。

飲食店ではお箸を十分に準備していたとはいえ、

時々、お客さんの数にお箸が追い付かないこともあったよう。

そこで、ところてんにお箸を一本だけ添えて何とかこれで召し上がってくださいませ、

とお出ししたこの食べ方が、いつの間にか粋な食べ方だと広まったのだとか。

いつの時代も、何がブームになるのか分からないものだ。

ファッションも先陣を切って時代の最先端を行く人たちが、

堂々と自信をもって着こなすからこそ、

初めは違和感を覚えていた人々も「これが今のオシャレなのね」と安心し、

それならばと、新しいスタイルにトライ出来たりもする。

「ファッション」と「ところてん」を並べるのはどうかとも思うけれど、

当たらずと雖も遠からずのような気がしている。

 

このような、お箸不足説の他にも、

ところてんは当時、とても高級なお菓子だったため黒文字を使って食べられていたのだとか。

黒文字というのは、和菓子に添えてある竹や木を削って作られた平らな楊枝のこと。

ただ、この黒文字を常備している家庭は少なくお箸を黒文字に見立てて食べていたことから、

ところてんは、お箸一本で食べていたという説や、

お箸で摘まむことで繊細なところてんを崩さずにたべられるように、

という何とも日本人らしい配慮から

一本で食べるようになったという説なども残されているようだ。

このようなことを考えていたら、やはり、ところてんが頭から離れなくなってしまった。

近々、私のデザートには黒蜜をたっぷりと回しかけた「ところてん」が登場するに違いない。

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