半年に一度くらいだろうか、私は、家中を見回りゴッキー対策をする。
だって、自宅で彼らに遭遇してしまったら、
即、戦闘モードに切り替えなければならないけれど、私には彼らに勝利できる自信がない。
ゴッキーとは、正式名称は控えさせていただくけれど、あの黒光りした手強い虫のこと。
一方的な思いを言えば、引越をする度に次の引越まで出てこないで欲しいと強く思う。
運悪く、その前に遭遇してしまったら、そろそろ引越か!?
私にとっては、そのようなことまで思ってしまう相手だ。
だからだろうか、学校を卒業し、1人暮らしを始めてからというもの、
無駄な戦闘を避ける為にゴッキー対策は抜かりなく行っている。
日本のご家庭では割と当たり前のように行われているゴッキー対策だけれども、
海外の人たちの反応は少々異なるもので驚いたことがある。
私が英国暮らしをしていた頃、
スーパーやドラッグストアなどでゴッキー対策アイテムを購入しようとしたのだけれど、
それらをなかなか見つけることができずにいた。
見つけたとしても、この程度のものでは気休めにしかならないじゃない、
と思えるようなものばかりだったものだから、私の探し方が悪いのかしら、そう思った。
そして、友人や知人たちに、どこで、どのようなものを購入しているのか尋ねたのだ。
しかし、返ってきた答えは、そのようなアイテムは使っていない、必要ない、というものばかり。
中には、「息子がカッコイイ昆虫だって言って虫かごで飼っているの」という強者までいて、
私は、引いてしまったことがある。
詳しく話を聞いてみると海外のゴッキーは、
飛び掛かってくるようなこともなければ、素早く動くこともなく、すぐに死んでしまうのだそう。
だから、強力な殺虫剤や特殊なアイテムは必要ないというのだ。
「なんですと!?????いやいやいやいや……ゴッキーだよ、ゴッキー。」
私は念の為、名称を確認し、この虫よ?と確認を促したこともある。
しかし、「あんなに弱い虫に躍起になるなんて」と肩をすくめられ、
私は、分の悪さに何度も口を噤んだ。
それから少しして分かったことなのだけれども、
確かに、外国のゴッキーは日本のそれほど手強くはないのだ。
じゃぁ、どうして日本の彼らは、あれほどまでに逞しいのか。
日本のゴッキーは、稀に見るゴッキー好きや研究者を除き、
ヒトに遭遇すれば、すぐに叩かれるか殺虫剤を噴射されるか、毒を盛られるか、
イイことなんて何一つない危険だらけの環境で過ごしている。
きっと、種族の生き残りをかけて、
ヒトという種族からの攻撃に耐えられるよう様々な機能が進化しているのかもしれない。
テラフォーミング計画で放たれたゴッキーが異常な進化を遂げた日本の漫画があるけれど、
※テラフォーミング計画は惑星改造計画、地球化計画と言う言葉に換えられることもあります。
あの世界観に対して恐怖を感じるのは、
彼らの進化する力は侮れないと知っている日本人だからなのだろうと思った記憶がある。
そのようなことをドラッグストアの一角で思いながら、
これからの先、半年間、彼らとの無駄な遭遇を避けるためG対策のアイテムをじっくりと吟味した。