自宅から少し離れた場所にあるフラワーショップを目指した。
昨年の我が家は、マゼンタピンクが鮮やかなプリンセチアをお迎えした。
上手に育てられていたのなら、今年の冬も鮮やかな色を見せてくれていたことだろう。
今年もプリンセチアにするか、久しぶりに真っ赤なポインセチアにしようか、
想いを巡らせながら、お店の前まで行った。
あぁ……シャッターは下ろされており、私のワクワクは行き場を失った。
出直すしかないけれど、そのまま帰宅するのも勿体ない気がして、
「自家製ケーキあります」の文言に誘われるようにして、フラワーショップ近くのカフェへ入った。
外観の印象とは異なり、ログハウスのような温かみのある店内は天井が高く、
テーブル席に座った瞬間、冷えていた体が内側から温められ、
じわじわ、ムズムズ、冬眠から目覚める少し前のような感覚になった。
自家製ケーキと紅茶を注文し、
待っている間は、店内のブラックボードに書かれていることを目で追って過ごした。
そこに、『ねぇ、ねぇ、知ってる?』というタイトルのもと、
サンタクロースのソリを牽いているのはメスのトナカイだと書いてあった。
私は、ずっとオスだと思い込んでいたため、どうしてオスだと思い込んでしまったのか、
出そうで出ない記憶を思い出すことに専念した。
確か赤鼻のトナカイの名は「ルドルフ」じゃなかったかしら、
そう思いスマートフォンで調べてみると確かにルドルフ、男の子の名前だった。
このトナカイはオスとして描かれていることが多いけれど、
実は冬にオスのトナカイがサンタクロースのソリを引くことはあり得ないのだそう。
トナカイはオスとメスの両方に角が生えているのだけれど、
オスは春に角が生えはじめ、秋から冬にかけて抜け落ちるのだそう。
一方、メスは冬に角が生えはじめ、春から夏にかけて抜け落ちるそうなのだ。
だから、サンタクロースのソリを牽いている立派な角をもったトナカイはメスとなのだだとか。
確かに、オーナメントのトナカイが、角なしトナカイだったなら、
可愛さも、スタイリッシュさも、中途半端なものになってしまうような気もするけれど……。
世の中に存在しているトナカイのキャラクターの多くは、そのような秘密を抱えているのか。
そのようなことを思っていると自家製ケーキと紅茶が運ばれてきた。
温かい紅茶の湯気を顔面に浴びながら
ソリを牽くトナカイがオスであってもメスであっても何ら支障はないのだけれど、
ほんの少し複雑な気がするのは、
とても暖かくて柔らかい空間で知った、とても現実的な視点からのお話だったからだろうか。
クリスマスシーズン中にソリを牽くトナカイを目にした際には、
小さなお子さまたちの夢を壊さぬよう、そっと、思い出していただけましたら幸いです。
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