普段よりも随分と早い時間に目が覚めた。
この季節は、明け方ともなると室内の気温もグッと下がる。
冷たくなっている自分の頬を両の手で包み込みながら、ベッドの奥へと潜り込み直した。
しかし、あまりにもスッキリと目覚めてしまったようで、再び眠りにつける気が全くしない。
私はストールを手に取りベッドを抜け出した。
これだけ冷えていれば、とびっきりキレイな月でも拝めるだろうか。
そう思った私は、軽く防寒を施してベランダへ出た。
夜明け前ではあるけれど、既に活動し始めている方もいる時間帯。
辺りの空気には人の気配が含まれているように感じた。
この時季の夜明け前は、一日の中で最も気温が下がる時間帯。
夜が明ける前の空気の冷たさを受け、思わずストールの端をギュッと引き寄せた。
冴え渡った空を見渡し、お目当ての月を探す。
白い光を解き放ちながら輝く冬の月は、夏のそれとはまた違う美しさをまとっていた。
この時季の月のことを「寒月」という。
「寒月」は、本来は「寒」の間の月のことを表す言葉なのだけれど、
寒さの中で澄んだ白い光を放つ月を表す際にも使われている。
ベランダにいた時間は、そう長くはなかったけれど、
夜が明けてくるにつれ、遠くの空がオレンジがかったピンク色……、
この場で使うならば曙色の方がしっくりくるだろうか。
曙色に変わり始めた。
見慣れた景色に新たな命が吹き込まれていくかのような空気と美しさに、清々しい気分になった。
このような景色を見ることができるなら、たまには寒暁もいいものだ。
そう言えば最近、家の近くで開花し始めた梅の花を見つけ、
探梅(たんばい)という言葉を久しぶりに思い出した。
これは、先人たちが、かすかに漂い香る梅の香りだけを頼りに
早咲きの梅の花を探しに山へ行き、ひと足先に春を味わうことを表しているのだけれど、
先人たちは相も変わらず風流だ。
私はと言えば、そのようなことにひと通り思いを巡らせつつ、
今朝は一段と冷えるなと身震いし、早々に室内に逃げ込んだのだけれども。
日々の暮らしに、ほんの少しだけ、“季節を感じること”を混ぜてみてはいかがでしょう。
無理をして混ぜ込むのではなく、
自分ができることを、できる分だけ、楽しめる分だけ、ほどほどに。