随分と長い間、会っていない友人がおります。
普段も連絡を取り合うこともないのだけれど、
年に一度だけ、年賀状で互いの近況を簡単に報告し合う仲。
その友人から今年も年賀状が届いたのですが、
今年は遠い日のエピソードと近況が、とある呪文と共に記されており、
「覚えてる?ドキッとしています。」と書き添えられておりました。
その呪文というのは、「アブラカタブラ」です。
アブラカタブラと言えば、
今でこそ、ファンタジーの世界の中で使われる呪文のようなイメージですが、
その起源はとても古く、
古代の中近東では、「病気よ、この呪文と共に消えてしまえ」という意味のもと
病気治療のおまじないとして実際に使われていたと言います。
そして、病気治療に使う呪文として世界中に広がった一面があるのですが、
病気治療のためだけではなく、魔除け、厄除け、邪気祓いのような効力もあるとされていたそうで、呪文を紙に書き、お守りとして使われることもあったのだとか。
このアブラカタブラを、私たちの身近なものに置き換えるなら、
転んでしまった小さな子どもに言う「痛いの、痛いの、飛んでといけー」と似ているようにも思います。
アブラカタブラは、このような万能呪文として知られているのですが、
語源を辿っていきますと、興味深いものに辿りつくのです。
この呪文、国や民族間を渡る度に各地の発音に言い直されるなどして、
少しずつ言葉が変化しながら伝わっているため、
この呪文を少しずつ語源に向かって遡っていきますと、
本来は「アバダケダブラ」という言葉だったことが分かります。
アバダケダブラも、先ほどからお伝えしているような
「病気(魔物、邪気など)よ、この呪文と共に消えてしまえ」
という万能呪文であることに変わりはないのですが、
もともとの呪文には、これに加えて「破壊されてしまえ」「息絶えてしまえ」といった攻撃呪文の意味もあるのだそう。
ハリーポッターなどがお好きな方は、この呪文が登場するシーンを思い出していただくと、
攻撃呪文として最強であることに、お気付きになるのではないでしょうか。
当時の私と友人は、この呪文の2つの顔を、ひょんなことから知ったのですが、
友人は、席を外して欲しい上司に向かって、
この呪文を茶目っ気たっぷりに発していたことがありました。
もちろん、本人の耳には届かぬようにこっそりと、です。
しかし、最近は、この呪文にはまっている我が子に
「アブラカタブラ」「アバダケダブラ」と呪文をかけられる日々を送っているそうで、
「過去に解き放った呪文を我が子からかけられるなんて、因果応報ってあるのね」と、
可愛らしいイラスト付きで書いてありました。
一方、私が久しぶりに触れた呪文は、懐かしいエピソードと共に
友人の幸せな日常を私に届けてくれました。
呪文も色々の様でございます。
アブラカタブラ、アバダケダブラ、見聞きする機会がありましたら、
今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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