仕事の都合でヨーロッパへ引越した友人が、
「髪の毛がこんな風になってしまいました」というメッセージと共に
豪快な寝ぐせが付いた写真を送ってきた。
始めは、その豪快な寝ぐせを見て笑わせてもらっていたのだけれど、
艶やかなロングヘアーがトレードマークだった彼女の髪の毛は、
水分のほとんどを抜きとられてしまっているかのようにも見え、すぐにメッセージを送り返した。
案の定、友人は現地で見つけたシャンプーを使って毎日、念入りにシャンプーをしていた。
ヨーロッパのほとんどの地域の水質は硬水。
軟水である日本から持ち込んだシャンプーは泡立たないことが多く、
髪の毛はあっという間にパサッと乾き、ごわついている上にザラッとした手触りに変化するのだ。
これは、硬水に含まれているライムスケールと呼ばれている石灰成分の仕業で、
お湯を沸かすケトル内やポット内もすぐに真っ白になるのだ。
このように、水そのものが肌に良いとは言い難い水質だということもあり、
ヨーロッパの人たちは、シャワーは毎日浴びるけれど、髪の毛はあまり洗わないという人が多い。
私の現地の友人たちも、夏のシャンプーは数日から1週間に1回ほど、
汗をかかない冬の時期は10日1回ほどで十分と言う人も珍しくなかった。
私が毎日洗っていると言えば、10人中10人がすぐに止めるべきだと熱く語ってくれた。
きっと、あの土地で暮らしていくことを思えば彼らの言うことが正しい。
ただ、郷に入っては郷に従えと言うけれど、
私も友人と同じようにシャンプーの習慣を変えることは出来ず、
髪の毛を傷めてしまったことがあった。
その時は、日本人のための日本人によるヘアサロンへ行き、
髪の毛に付着してしまうライムスケールを落としてもらい、
スペシャルなトリートメントなどをしてもらっていた。
日本で、お年頃の女性がシャンプーは10日に1度程度するかしないかだ、と言ったなら、
冷ややかな視線を浴びてしまいそうだけれども、それが一般的であり、常識である国も多々ある。
同じ時代を生きていても、環境や教育が異なれば、
常識は非常識に、非常識は常識にもなり得る。
常識も大切ではあるけれど、縛られ過ぎず、縛り過ぎずいきたいものだ。
そのようなことを思いながら、友人の豪快な寝ぐせを微笑ましく思った。