用事を済ませ、建物の外へ出ると雨が雪へと変わりかけていた。
大きな雨粒に時折混ざる雪が妙に神秘的に思えて、
数十メートル先にある横断歩道まで、傘を差さずに歩くことにした。
本格的な「雪」になるまでには「冷え」が足りなかったのだろう、
神秘的な光景は、いつの間にか普段通りの雨の景色に変わっていた。
そして、開いた傘の上を弾んでいた雨粒も止み、
くすんだ雨雲の切れ間から太陽の光が地面を照らし始めた。
陽射しが反射している水たまりを覗き込むと、
光と共に辺りの景色を取り込んで曼荼羅のような模様を浮かび上がらせていた。
この瞬間だけ見ることができる曼荼羅模様を横目で捉えつつ、水たまりを通り過ぎた。
「自然には敵わない」
そのような言葉をよく耳にするし口にもするのだけれど、改めて、「ほんとうに」と思う。
そのようなことを頭の片隅で思いながらコンビニへ足を踏み入れた。
お目当てのものを手にレジへと向かう途中、大きく記された「サラダ味」の文字が目に留まった。
そう、お煎餅やスナック類の味つけの定番と言っても過言ではないだろう、あの味のことだ。
学生の頃だっただろうか。
ねぇ、どうしてサラダ味?
当時の私は、尋ねておきながら失敬な話なのだけれど、
納得できるような答えが返ってくるだろうという期待を一切抱かぬまま
サラダ味と記されていた何かを口に運びながら尋ねたように思う。
すると、間髪をいれずに「サラダ油のこと」と答えてくれた友がいた。
教えてもらったことを大人になった私の言葉で簡単に説明すると、
日本でサラダ油が高級調味料として使用されていた時代に、
揚げたお煎餅にサラダ油を軽く塗り、お塩を振って味付けをしたお煎餅が登場し、
これにサラダ味という名が付けられ親しまれてきたのだそう。
もともと、サラダ(SALAD)は英語なのだけれど、
サラダ(SALAD)の語源となっている言葉は、ラテン語でお塩を表すSALだという。
西洋ではお野菜にお塩を振りかけて食していたことからサラダという言葉ができたのだそう。
また、精度が高く、サラダにかけるドレッシングを作る際にも生で使用できる食用油のことを
サラダ油と呼ぶようになったそうで、
「サラダ味」という名は、この辺りの語源背景と、
お煎餅の調理法や味付け方が合わさり名付けられたようだ。
当時、友人があまりにもスラスラと説明してくれたことに感動したからだろうか。
「サラダ味」の文字を目にすると、時々ではあるのだけれど、
「サラダ油だ……」と諸々を端折った状態で名の背景を思い出すことがある。
それを、こうして、私以外の誰かに繋ぐ機会が訪れるなんて、ちょっぴり不思議な気分だ。
いつも柊希にお付き合いくださる皆様、ありがとうございます。
サラダ味の「何か」を召し上がる機会がありましたら、
ちらりと思い出していただけましたら幸いです。