久しぶりにテレビ越しに再会したパンダのシャンシャン(香香)は、
少し見ない間に、すっかりパンダの風貌になっていた。
生まれて間もない頃の彼女の体はピンク色を帯びており、
俵型のおむすびのようなボディーが印象的だった。
ピンク色の体から少しずつパンダ模様を浮かび上がらせてはいたけれど、
丸顔のふっくらパンダになるのはもう少し先のことかしら。
そのように思っていたのだけれど、子どもの成長が早いのは人に限ったことではなかったようだ。
自然交配で順調に成長している、初めてのパンダということで、
パンダに関する情報を見聞きする機会も増えたように思う。
かく言う私も、最近になって初めて知ったことも少なくはない。
一番驚いたのは、パンダは笹の葉が苦手だということ。
これはパンダのルーツがクマであり元々は肉食動物だったことが理由なのだそう。
肉食の体を持っているパンダの体内や消化機能は肉食仕様で腸が短く、
腸内細菌も肉類を分解する菌は多数いるそうなのだけれど、
笹などの食物繊維を消化する最近は、そう多くはないという。
その結果、あれだけ大量の笹を食べているというのに、
そのほとんどが消化されずに排出されてしまうのだ。
大量の笹を十数時間も食べ続けているのは、食いしん坊というわけではなく
消化出来ずに排出してしまう分の栄養を量で補っているとも言われている。
ふっくらボディーの彼らだけれども本当は常にエネルギーが不足しており、
あの愛くるしいふっくらボディーを保ちつつ、
日常生活を送ることができるだけのエネルギー確保するためには、
できるだけ食べ続け、空いた時間はエネルギーを無駄にしないよう
多くの時間を睡眠にも充てることも必要なことのようだ。
彼らは、食べては寝てを繰り返し、時々、可愛らしさを振りまいているけれど、
「なんてお気楽なんだ」と思っては申し訳ないくらい、実は、ストイックな日々を送っている。
もちろん、飼育されているパンダたちは、竹や笹の葉をメインに、
フルーツや野菜、穀物、お肉や大豆、お砂糖なども与えられているということなので、
しっかり食べて、しっかりと寝て、しっかりと遊べるだけのエネルギーを確保できるそうなのだけれども。
パンダも見かけによらないのだ。
ただ、もう少しだけ踏み込んでパンダのことを知ってみると、
彼らに苦手な笹を食べさせるきっかけを作ったのは私たち人間、のようだ。
大昔に暮らす人間たちがパンダの領域へと足を踏み入れ、
彼らは住む土地を無くし山奥へと追いやられ、
同じ肉食である動物たちとの獲物の取り合いや争いを避けて種族を守るために
苦手な笹を口にするようになったというのだ。
テレビ越しにシャンシャンを眺めながら「可愛い」と思うと同時に、
「ごめんね」という気持ちが複雑に絡み合った。
世の中には知らなくていいことも沢山あるけれど、
知っておいたことが良いことも沢山あるように思う。
※シャンシャンの様子は、上野動物園の開園日、及び開園時間であれば下記リンク先で配信されているライブカメラ映像で見ることもできます。
関連リンク: