ぽっかりと中途半端に空いた時間を持て余し、
偶然目に入った雑貨店らしきドアを押し開け店内に足を踏み入れた。
様々な時代の雑貨が所狭しと並べられたそこは、まるでおもちゃ箱の中のようだった。
一見、スペースと言うスペースに、
ぎゅうぎゅうに押し込まれるかのように並べられているように見えた雑貨だったけれど、
私の目が、その世界観に慣れてきたからだろう。
感じていた以上に丁寧に、愛情深く陳列してあることが分かった。
レトロなデザイン雑貨は、古いけれど新しく、
今の技術と比較すると未完成故に滲み出る不器用さのようなものが、逆に、味わいとして映った。
様々な表情を、時代背景と共に見せつけてくる雑貨を楽しんでいると
店員が「占いってお好きですか?」と声をかけてきた。
好きだとも嫌いだとも言い難く「嫌いではないです」と答えてみた。
すると、「手のひらを出してみてください」と言われたため、
言われるがまま店員の前に手のひらを差し出した。
店員は手にしていた何かを取り出して私の手のひらの上にそっと乗せた。
視線を落とすと、それは魚を模ったオレンジがかった赤いセロファンだった。
ややリアルな魚の胴体には英語で、呪文のようなものが書かれていた。
私の手のひらの上の魚は、じわーっと動きながら変形していき、
ある状態でピタリと動かなくなった。
これは、各々の体温でセロファンが反応するため、
この動き方や状態で、その人の本性を占うというミラクルフィッシュという名の雑貨だった。
販売している商品のようだったのだけれども、
その日はお客が少ないから特別にと言って楽しませてくださったのだ。
ミラクルフィッシュを手のひらに乗せたとき、
この魚(鯉)の頭が動けば嫉妬深い性格、尻尾が動けば無関心で冷淡、
頭と尻尾が動けば惚れやすく、横に捻じれれば気まぐれなのだとか。
更に、転倒すれば不誠実でインチキで、ひっくり返れば情熱的。
全く動かなければ死人なのだそう。
もちろん、大人、子どもを問わず皆で、その場を楽しむことができるパーティーグッズ、マジックアイテムのひとつだ。
私の手のひらの上の鯉はと言うと、頭と尻尾を動かしながら、きゅーっと横に捻じれて動かなくなった。
その様子を観察していた店員は、「惚れっぽくて気まぐれなんですね」と笑顔で言った。
「そうみたいですね」と答え、セロファンの魚と結果シートを手にお店を後にした。
わたし、どうして、ちょっと恥ずかしかったのだろうか。
レトロで可愛いお遊びアイテムに油断していたら、
当たらずとも遠からずといった結果を出してきたからだろうか。
中途半端に空いた時間を持て余していたはずなのに、気付けば楽しい時間になっていた。
歓送迎会などのイベントがありましたら、皆さんでミラクルフィッシュ、いかがでしょうか。
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