ここ数日、スケジュールの都合で規則正しい早起きが続いているからだろうか。
お腹が、ぐうぅーっという音とともにお昼時を知らせてくれている。
体内時計は、ちょっとしたことで正確に時を刻むのだと改めて実感し、
仕方がないことだとは言え、
普段の不規則なライフスタイルによって体に与えている負担を申し訳なく思った。
天気が良かったこともあり、その日のランチは気分転換も兼ねて、
隠れ家的な場所に最近オープンしたタイ料理屋へ行ってみることにした。
私が到着したときには既に列ができており、
私の前には、初々しいスーツ姿のグループが並んでいた。
そのグループの中には、年齢は彼らと変わらないように見えるけれど、
明らかにスーツが体や顔に馴染んでいる人が混ざっていた。
社会に出てからの成長も、こうして人から滲み出てしまうものなのかと思った。
読みかけの本に視線を落とし順番を待っていると、初々しい男性が「僕は若輩者ですから」と言った。
話の内容は分からないけれど、その言葉と、そう口にした彼とのアンバランスさが初々しさを増幅させ、
これから多くのことを学んでいくであろう彼が、私には微笑ましく映った。
すると、早速、彼より少し先輩であるように見える一人が言った。
「若輩者の使い方、確認しておいた方がいいよ」と。
その後、そのグループは先に店内へ案内されたため、その後のやり取りを見届けることはできなかったけれど、おぉ……、さすが先輩社会人、と思った。
「若輩者(じゃくはいもの)」という言葉は、わりとよく耳にする言葉だけれども、
意外と正しく使えていない人が多い言葉でもある。
「若輩者」とは、経験が浅く、少ない様子や、年齢が若くて未熟者であることを表す言葉なので、
社会人になったばかりの初々しい彼らが、使ってしまいたくなる気持ちも分かる。
分かるのだけれども、本来は、若者自身の経験が浅く、少なく、未熟なことを表現するために使う言葉ではなく、
それなりに経験がある人が、自分のことや自分の立場を謙遜する時に使う言葉なのだ。
ですから、社会人1年目の、経験がゼロに等しい未熟者が、
目上の方に対しての挨拶や自己紹介などに使うと失礼にあたるため、
使いどころや使い時を見極める必要がある。
どうしても、同じような内容を挨拶や自己紹介、会話の中に盛り込みたいのであえば、
ストレートに未熟者と表現する方が潔く、爽やかでスマートだろうと思う。
「若輩者」は、誰から見ても経験を重ねてきている方が謙遜して使う言葉で、
この部分を知らずに使ってしまうと、相手に対して失礼にあたる場合もあるため、
使う際には自分が使える状況や立ち位置にいるのかどうか、ご確認くださいませ。
私がタイ料理屋の店内へと案内されたとき、
「若輩者の使い方、確認しておいた方がいいよ」とスマートに指摘した彼の姿が視界の端に入った。
ふと、私は、社会人何年目でこのことを知っただろうか、と思った。
使う機会が無かったことが幸いし、「若輩者」という言葉で失敗をすることは無かったけれど、
この言葉を正しく理解し、聞き分け、扱えるようになったのは、
彼よりも少しだけ大人になってからだったように思う。
春は至る所がキラキラと輝いていて、
私も自分をキラッと輝かせながら前へ進もうと思わせてくれる季節だ。
そのようなことを思いながら、ガパオライスを味わった。