立派な生ワサビをいただいた。
その力強く瑞々しい姿と感触からは、
水と空気が美味しい場所で丁寧に育てられたことが透けて見えるような気がした。
ツンとした辛味の奥に感じられる微かな甘味とワサビ特有の香りは、
口にする人の食欲を程よく刺激する。
調味料としての力もさることながら、ワサビが持つ強い殺菌作用、防腐作用は、
生魚を口にする機会が多い日本人にとっては、非常にありがたい。
しかも、細胞レベルでのアンチエイジングにまで力を発揮する食材ゆえ、
世界中の人々がスーパーフードとしてワサビに注目していることも頷けるように思う。
そして、日本国内で手軽に手に入るチューブ入りワサビのクオリティーは高く、
この存在は、ワサビ好きな外国人にとって、とても羨ましいことのようだ。
我が家で常備しているワサビは、お手軽なチューブタイプのモノなのだけれど、
ワサビの摂取率が高いのか、頻繁に冷蔵庫内のワサビの残量を確認している。
そして、時々、フレッシュな生ワサビを入手すると不思議とテンションが上がるのだ。
チューブ入りのワサビに不満は無いのだけれど、
生ワサビを美味しいと感じる味覚は、日本人ならではのものだろう。
この生ワサビ、きめ細かくするほどに辛味が増すと言われている。
これは、辛味成分は細胞が壊れる過程で作られるからであり、
玉ねぎや大根などの辛みもこれと同じ仕組みによるもの。
だから、辛みを際立たせたくないときには、できるだけ細胞を壊さないような下処理を施すと良い。
滅多に生ワサビを扱うことは無いのだけれど、この仕組みを生かすための言葉がある。
それは、「ワサビは笑いながらすれ」と言う言葉。
ワサビは、すりおろすときに力任せにすってしまうと、ワサビのキメが粗くなり、
ワサビが本来持っている粘り気も落ち、
ツンとした辛みの奥にある甘味も無くなってしまうのだそう。
だから、ワサビをする際には、力任せにするのではなく、
力を入れないように注意し、優しく細かく、笑いながらすると良いというアドバイスだ。
何処で誰に聞いたかは忘れてしまったのだけれど、
この言葉を知ってからは、キッチンで生ワサビをすりおろす際、
怪しさいっぱいに、一人口角をキュッと上げてすりおろしている。
優しい力加減ですりおろしさえすれば言い訳で、別に笑みを浮かべる必要もないのだけれど、
初めてこの言葉を聞いたとき、何かしら私の心に響いてしまったのだろう。
美味しい生ワサビに仕上げる魔法がわりになっている。
皆さんも、生ワサビを扱う機会がありましたら今回のお話をチラリ思い出していただき、
口角をキュッとあげて、美味しいワサビに仕上げてみてくださいませ。
「ワサビは笑いながらすれ」でございます。
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