日本茶の茶葉が少々増えすぎて、なかなか飲みきれない状態になってきた。
このような場合、私は一番飲みたいものから順に手を伸ばすことが多いのだけれども、
そうすると、その間に賞味期限が切れてしまうものが出てくることがある。
かといって、賞味期限が近い順に手を伸ばしたら、
一番飲みたい茶葉の美味しい時季を逃してしまうこともある。
日本茶葉の用途は色々とあるけれど、どうしたものだろうかと有難い悩みを巡らせる穏やかな夕暮れ時だ。
取り急ぎ、賞味期限が近いものを取り出しテーブルに並べてみる。
茶葉の特徴や風味を見ていたらブレンドしてしまいたい衝動に駆られ、
その中から3種類ほどをミルにかけて粉砕した。
碾茶(てんちゃ)を粉砕したわけではないため、正確にはお抹茶とは言えないものだけれど、
自家製のお抹茶が出来上がった。
碾茶(てんちゃ)というのは、
お抹茶になるまえの茶葉、石臼で挽くまえの状態の茶葉のこと。
単純に茶の木の種類が違うのかしら?と思ってしまいがちなのだけれど、
玉露などと同じ茶の木から摘み取られた葉が使われている。
異なる点は製造過程にある、フレッシュな茶葉を揉むという作業。
碾茶(てんちゃ)は、このフレッシュな状態である生の葉を揉まずに作られる。
摘み取られたフレッシュな茶葉は酸化を止めるために蒸気で蒸されるけれど、
このあと、蒸された茶葉を風で吹き上げるようにして冷まし、一気に乾燥させるのだそう。
この状態では、茶葉に茎や葉脈筋が残っているため、
舌触りに影響するこれらを丁寧に取り除いたものをが碾茶(てんちゃ)だ。
ぱっと見た印象は、乾燥パセリや乾燥バジルの粗めのものといった風。
これを臼で挽いたら、私たちの知っている、あのキメの細かいお抹茶となる。
私が以前見学させていただいたことがある、お茶の工場では、このような手順だったように思う。
この時の工程を思い返すと、茎や葉脈が残っている状態の茶葉で作った自家製抹茶では、
茶筅で点てようと思うと舌触りが荒いし、お味もお抹茶とは異なる点も納得できる……、が、しかし。
料理に使う調味料や簡単に緑茶を味わうためのものとして自宅で楽しむ分には、
手軽に栄養を余すことなく摂取できる上にゴミも出ず、
きちんと美味しいのだから良いじゃないか、とポジティブシンキングでキャニスターに移し替えた。
ガラス越しの力強い緑色が、明日からの暮らしを、ほんの少し楽しくしてくれるような気がした。
外を見ると、宇宙船のような厚い雲に、沈んだばかりの太陽の残り香ならぬ、光が溶け出していた。
何処かの空では、これから昇ってくる太陽の光が、夜の終わりの空に溶けはじめているのだろうか。
世界の何処かにあるであろう、昼間でも夜間でもない景色で繋がる場所。
そこの景色は、どのような景色なのだろうか。素敵な場所だろうか。
そのようなことを思いながら挽きたてのお抹茶で一服した。
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