以前、食育に携わっている知人から、このような嘘のような本当の話を聞いた。
それは、小さな子どもたちの中には、水族館やテレビ、絵本などの中で目にする魚と、
食事として出る魚が同じものだと認識していない子がいるのだとか。
自分が口にしている魚が海を泳ぐ、あの魚だとは何となく理解はしているようなのだけれど、
切り身の状態で泳いでいると本気で思っているケースもあり、
便利な世の中だからこそ丁寧な食育が必要で、それはとても地道な作業なのだと言っていた。
切り身の状態で泳いでいれば、調理の手間を随分と省くことができるなと、
頭の中で子どもの想像に乗ってはみたものの、
環境や教育が人に与える影響は、思う以上に大きいように思った。
口にしているものが、どのような最終形態で目の前に現れるのかによって、印象も変わるのだろうけれど、
今、何が旬のものなのか。
良くも悪くも、その境目が分かりにくい今は、
目の前にあるものの真の姿を知ることは簡単ではないのかもしれない。
そのようなことを思いながら、フルーツショップで手に取ったのは、この時季から夏に旬を迎えるイチジクだ。
無花果と書いてイチジクと読む。
これは、イチジクが花を咲かせることなく実をつけるからである。
正確には花を咲かせないのではなく、
私たちがイチジクの実を割った時に目にする、種だと思っているブツブツとしたあれが花なのだ。
私たちは、果実を食べている気分なのだけれど、実際は花を食べているという、風変わりなフルーツである。
ここでは、分かりやすいように、敢えてイチジクの実と呼ぶことにするけれど、
イチジクの実には、様々な栄養素が含まれており、期待できる効果として挙げられているのは、
便秘や浮腫みを予防し、腸内環境を整えたり、
血糖値が急激に上がるのを抑えて、生活習慣病を予防したり、
様々なアンチエイジング効果に、肌トラブルを防いで健やかな肌に整えたり、
ホルモンバランスを整えるなど様々。
他にも、胃もたれを緩和したり、二日酔いの予防にもなると言われているため、
暑くなり、冷えたビールなどのアルコール類が美味しい季節には、食後のデザートにイチジクを食べるのもおすすめ。
秋であれば、柿が二日酔い予防にひと役買ってくれるけれど、この時季は、イチジクだ。
イチジクはドライフルーツでも食べることができるけれど、ドライフルーツでいただく場合、
食物繊維がフレッシュな状態のときよりも10倍ほど増す代わりに、
旨味や栄養が凝縮される分、カロリーが高くなるので要注意。
便秘解消の効果を期待する場合は、ドライフルーツを少量。
その他の効果を期待する場合には、フレッシュなものを。と食べ分けるのもひとつの手だ。
そうそう、本日は話が二転三転しているけれど、イチジクと言えば葉っぱにもご注目あれ。
イチジクの葉は、漢方薬や薬効が期待できる入浴剤として重宝されているけれど、
アダムとイヴが体を隠すために使っている葉っぱ。
あれもイチジクの葉なのだ。
旧約聖書が書かれたときには既にイチジクがあったということで、
葉だけでなく、実も随分と古くから不老不死の果実、神聖な果実として大切にされてきたと言われている。
イチジクは、初夏から初秋にかけて、ゆっくりと味に深みが出るため、
その、味が変化していく過程を楽しむことができるフルーツでもある。
しっかりと熟したフレッシュなものを、そのままサッパリといただくも良し、
ハチミツを垂らして甘さを足すもよし、
シーズンをかけて味の変化を楽しむもよし。
お嫌いでなければ、旬の美味しさを、
多くの嬉しい効果効能と共に丸ごと召し上がってっみてはいかがでしょうか。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/