この時季は、毎日水を変え、水切りをしても普段よりも切り花の花持ちが少し短くなる。
すぐに萎れさせてしまうくらいなら夏は切り花が無くてもいいかしら。
そう思ったこともあったのだけれども、やはり家の中に花があるのは良いもので、
その日も、ふらりと立ち寄った顔馴染みのフラワーショップで、スプレーバラを数本買って帰った。
帰り道、手にしたバラから時折放たれる香りは、夏の熱を帯びており、
人の心を惑わせてしまいそうな濃いものだった。
後ろ髪を引かれる思いで、もう一度と鼻をを近づけてみるのだけれど、
このような時に限ってバラからは、先ほどのような香りはしないのだ。
またしても、バラの華麗な駆け引きの術中にはまってしまった瞬間である。
自宅へ戻ると、私もバラもしばらくの間、涼をとり、落ち着いたところで花瓶に生けることにした。
最初に棘の処理をしていたのだけれど、スプレーバラはとにかく棘が多く、細かい。
取り除きすぎてしまっては茎が痛んでしまい、花持ちにも影響が出るため、水切りのタイミングに合わせて適度に取り除く。
いつものことだと、視線をバラから外したまま棘を取り除いていると、指先にチクリと鋭い痛みが走った。
「私のことを、ちゃんと見て」
スプレーバラにそう言われたような気がした。
作業の手を止めて痛みのする指先を見てみたのだけれど、細かい棘が指の奥に刺さってしまっていた。
ピンセットでは取れそうにない。
かといって針を使っても難しそうな棘と、刺さり具合だ。
放置したまま自然にとれるのを待つかとも思ったのだけれども、
刺さっている場所が、日々キーボードを触る私にとって不都合極まりない場所だったこともあり、
しばらく指先を眺めながら、脳内の隅に置いてある知恵袋をのぞき込んだ。
ふと、随分と前にフラワーショップの方に教えていただた棘取りの方法を思い出したため、それを実践してみることにした。
それは、今や「一家に一袋」とまではいかないにしても、割と高い確率で所持されている重曹を使う方法だ。
まずは、患部の汚れを優しく取り除く。
用意するものは、カレースプーン1杯程度の重曹と少量の水、そして幹部を覆うための絆創膏やガーゼ類だ。
手順は、重曹を水で溶き、気持ち硬めの重曹ペーストを作り、棘が刺さった部分に厚めに塗り絆創膏やガーゼで覆うだけ。
棘の刺さり具合によって異なるのだけれど、この状態を半日から1日保つと、
棘が皮膚から浮き出し勝手に取れていたり、ピンセットで摘まめるくらいの状態になっていたりするというのだ。
もし、棘が深く刺さっており半日から1日経っても顔を出さない場合は、
再度、重曹ペーストを作り塗って浮き出るのを待つというもの。
これは、重曹の性質によって皮膚を膨張させて、棘を押し出すという仕組み。
重曹によって水分が皮膚に浸透し、皮膚を柔らかくするため、更に棘が取り除きやすくなるのだそう。
もちろん、民間療法のひとつなので衛生面に考慮したり、
緊急性が高い状態の時には専門医に処置をお願いする方が良いのだけれど、
私のような状態のときや、刺抜きを嫌がるお子さんには、役立つ知恵である。
実際、私の指先に刺さった棘は皮膚の中に刺さり切ってしまってはいたものの、刺さり具合が浅かったのか、
3時間ほどで重曹ペーストの中に吸い込まれるようにして取れていた。
棘だけでなく、木のささくれなどが刺さってしまったときなどにも使える方法なので、
アウトドアを楽しむ機会が増えるこの時季は、頭の片隅に置いておいても良いのかもしれない。
そうそう、棘抜きの豆知識も大切だけれども、よそ見のし過ぎにもご用心。
本日も、良き日となりますように☆彡
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