寝起きの喉を潤すべく、ウォーターサーバーのボタンを押した。
しかし、スズメの涙ほどの量しか出てこず、朝からウォーターパックの詰め替え作業を行った。
ひと息つかぬまま、レモン果汁を入れたグラスに水を注ぎ、それを矢継ぎ早にゴクゴクと喉の奥へと流し込んだ。
命の水とはよく言ったものだと思う。
体中の細胞に水分が行き渡ったのか、すっきりと目覚められたような気がした。
日本の水は軟水でヨーロッパの水は硬水であることが多いのだけれども、
外国で暮らしていた時、水に悩まされることが多かった。
口にするものはペットボトルで買い置きしておくのだけれど、
顔を洗うにも、髪の毛を洗うにも、体を洗うにも、硬水では荒れてしまうのだ。
自分の肌に合うからと日本から持参したアメニティーグッズ類は、現地の水との相性が悪く、使い物にならないことを知ることとなった。
自分が変わる方が早い、そう感じて、現地の水やそれらを片っ端から試すこと始め紆余曲折があったのだけれども、
同時に、日本の水の美味しさを痛感させられ、
日本に美味しいものが多い理由のひとつには、水の性質があるように感じた。
硬水と軟水の違いだけれど、
軟水は肌への刺激が少なく、アトピー肌や敏感肌でも安心して使い続けられ、
お洗濯をする際にも洗剤の泡立ちが良く汚れをしっかりと落とすことができるのだ。
日本字が好む香り高く旨味を感じる緑茶も軟水で淹れる方が数百倍美味しい、と感じる。
軟水に難点は無いように思うけれど、強いて言うならば、良くも悪くも癖がないということかもしれない。
それでも、各地の水を飲み比べるとハッキリとした味の違いがあり、
好みの水を探すのも楽しいものだと思う。
一方の硬水の特徴は、とにかくミネラルが豊富だということ。
電気ケトルでお湯を沸かせばケトル内にビッシリとミネラルが付着するレベルだ。
豊富なミネラル成分のお陰で、料理の味にも影響が出やすいため、
フランス料理では水を多用せずにワインやスープストックを使うことが多い。
しかし、水も使い方次第。
素材の「あく抜き」をしたいときや、煮くずれをさせずに煮込みたいときなどは、
硬水に含まれている各種ミネラルがいい仕事をしてくれるため、きれいに仕上げることができる。
さらに、日々の生活の中で不足しがちな各種ミネラル成分の補給や、ダイエット、便秘解消にもひと役かってくれる水である。
飲み物に関しても、硬水は緑茶には合わないけれど、紅茶や中国茶、コーヒーなどは硬水の方が合うと言われており、
中でもコーヒーは、使う水の硬度の違いによってコーヒーの味の出方にも違いが表れるのだとか。
そうそう、日本ではダイエット効果があるという触れ込みの、外国のミネラルウォーターがある。
愛飲者が増えたことで流通や価格も随分と安定してきているけれど、
ダイエット効果が期待できる理由は、たっぷり含まれたミネラルを水分と一緒に摂取できるからである。
理にかなってはいるのだけれど、体質によっては合う、合わないがある。
この話をヨーロッパの知人たちにすると、
「ただの水がその値段?買う人がいるの?信じられない」と眉間にシワを寄せる人がほとんどだ。
私は、そのような経験をしてしまったからだろう。
少々冷静に見てしまうところがあり、日本人に不足しがちなミネラルを水で手軽に補うことができるという利点は確かにあるのだけれど、
ミネラルを豊富に含んだ日本人の体に合う食材を摂る方が安心で、安全で、お手軽だと思っていたりする。
稀にではあるけれど、料理に硬水を使うこともあり、決して硬水がダメだと思っているだけではないのだけれど、命の水も色々だ。
そのようなことを思いながら、蝉の声をBGMに抹茶レモンティーを淹れた暑い朝。
今日も健やかな1日でありますように☆彡
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