終戦記念日と聞いて思い出す話がいくつかあるのだけれど、
その中のひとつに、一般家庭でペットとして飼われていた多くの犬や猫たちが、国に差し出されたという話がある。
当時の日本は戦時体制下にあり、配給される食糧が人々に十分に行き渡らなくなってきた頃だったという。
人が満足に食事をすることができない中、軍用犬や、猟犬といったお役目を持った犬以外の犬や猫を飼うことは贅沢で、
お役目を持たない犬や猫は不要だと言う声があがったという。
贅沢だという理由以外にも、狂犬病を防ぐためだとか、
空襲時に犬が本能剥き出しで逃げ出して人に危害を加えないように、
更に、寒い戦地で戦う兵士たちの軍服に使われる毛皮の確保といった理由が挙げられていた。
国の命令に従うしかない当時の飼い主たちは、仕方なくペットを国に差し出したのだそう。
集められた犬や猫たちが、どのような理由で選別されていったのかは定かではないけれど、
いずれにしても、差し出された犬や猫たちが殺処分されることは、予め決まっていたのだ。
あるお宅では、母犬とその子どもが2匹を国に差しだした。
そして、2匹の子犬が母犬の前で殺されたそうなのだけれど、
その光景に怯えた母犬は、体を震わせながら飼い主が待つ我が家へ逃げ帰ったという。
しかし、飼い主は逃げ帰ってきた母犬をどうすることもできず、
ただただ、国のためにお前を家に置くことはできないのだと母犬に言いながら、何度も謝ったのだとか。
賢かった母犬は、飼い主の言葉を理解したのか、飼い主に見切りをつけたのか、
自分から、その家を出て行ったのだそう。
飼い主は、終戦した後も、その時の母犬の後ろ姿を忘れることができないと語ったという話が残されている。
人の都合で始まる戦争は、姿形があるもの、無いもの、目に見えるもの、見えないもの、多くのものを巻き込んでいくのだ。
この日は、実際に起きた、何かしらのエピソードに触れる機会があるように思います。
何を耳にし、何を感じ、何を思うのかは、個々の自由なのだけれど、
ほんの少し心を落ち着かせて、今の自分が何を感じ思うのか、触れてみてはいかがでしょうか。
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