赤い口紅に、漆黒にゴールドカラーのローヒールが印象的なご婦人が、目の前を颯爽と横切った。
その、年齢を感じさせない装いと歩き姿に、名前は忘れてしまたけれど、誰かが残した言葉を思い出した。
『人は、歳を重ねただけでは老いない。理想を失うときに初めて老いる。人は、希望がある限り若く、失望とともに老いてゆく。』
といったような内容の言葉だったと思う。
要は、心の持ち方次第だということだと思うのだけれども、
一瞬の歩き姿だけで自分の在り方を語ることができる女性を久しぶりに目にした気がした。
その時に感じた、真の大人のインパクトに、浸っていた私の背後から突然、
「あなたは眠くなーる、眠くなーる、なった?眠くなった?」という子どもたちの声が聞こえてきた。
頭の中をワシャワシャと掻き混ぜられたような気持ちになった私は、歩きながら振り返った。
思わず、心の中で「今どきそれ?」と発してしまった光景は、
青い紐の先にぶら下げられた五円玉を、仲間の目の前でゆらゆらと揺らしているところだった。
揺らされた子は、催眠術にかかった様子を大げさに演じ、周りの子たちと一緒に盛り上がっている。
私の心の中で、その日、二度目の「今どきそれ?」が聞こえた気がした。
そう言えば、催眠術というものに対して思うこと、感じることには賛否両論あるけれど、
催眠そのものには、ある程度の効き目のようなものがあると言われている。
ある医学博士の話によると、催眠というものは、誰もが持っている心の動きなのだけれど、
普段は、日常の中にある様々なモノゴトや気持ちの中に丁寧にしまわれており、気付かないことが多いのだそう。
エンターテイメントとして繰り広げられるものを観たり、
ニュースに取り挙げられるよう事象に触れると洗脳と同じ類のものとして見えてしまうけれど、
私たちの意識というものは、よくできており、
催眠をかけられている本人の中には、催眠を受けているという自覚があるという。
だから、本人が心から嫌だと思うこと、思っていることに対しては、体が、その催眠を受け入れないようになっているのだそう。
要するに、本人が潜在意識で望む気持ちが強いモノゴトに関しては、効き目があるため、
様々な症状や気持ちを改善したり、サポートするためのものとして使われているという。
もちろん、ここで言う催眠は、その分野のプロが扱う専門的な催眠というものの話なのだけれど。
しかし、この催眠。彼らにとっては、オモシロイ光景として映ったのだろう。
そうとしか思えないような光景が、私の背後で賑やかな声とともにしばらくの間、広がっていた。
目の前で繰り広げられているモノゴトは、本当は、いつだってカラフルである。
そして、心の持ち方というスイッチを、どうするのかは、いつだって自分次第。
そのようなことを思った日。
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