お目当てのものを探しにホームセンターへ行った。
広い店内の中央に立ち、どの方角へ向かうべきか、天井からぶら下げられている案内版を見上げ、目星をつけた場所へと向かった。
途中、ガスバーナーが目に入り思わず方向転換した。
市販のカセットボンベにバーナー器具をセットするだけで、アウトドアやキッチンで使うことができるガスバーナー。
お料理に焦げ目をつけたいときに簡単につけることができる点が気に入っており、少し気になっていた。
お肉や魚介類の表面を軽く炙ったり、スイーツの表面を炙ったりということが、
自宅やBBQシーンでも手軽に出来るなんて良いじゃないか、と心を鷲掴みにされていたのだ。
ただ、手軽なお値段であるにも関わらず、なかなか手が伸びなかったのは、
ガスバーナーが無いなりに過ごすことができていたからだ。
お肉や魚介類、串ものを炙りたい時には、七輪用の網を利用してガスコンロの上で炙れば事足りる。
少しばかり厄介なのは、軍手が必要になる点と、
食材にしっかりと脂がのっているときに、ガスコンロ付近に滴り落ちる脂の後片付けくらいである。
しかし、これも許容範囲内であり、そう困るほどのことではない。
クレームブリュレやその他のスイーツの表面を覆う香ばしいキャラメリゼも、
ガスバーナーがあれば、どんなに楽だろうか、と毎度思ってはいるのだけれど、
これだって、普段使用しないスプーンを直火で炙り、スプーンの背をグラニュー糖に当てさえすれば、スプーンの熱でグラニュー糖が溶けて、香ばしくなり、優しいパリパリが出来てしまうし、
この方法は炙りたい面積が小さい魚介類であれば、十分使うことができている。
この方法の厄介な点は、うっかりスプーンを素手で持っていると熱が伝わってきてしまうため、
布巾などでスプーンの柄を覆い持つくらいだろうか。
いざとなれば、点火棒(と呼ぶらしいチャッカマン)でも応用は効く。
そして、ふと自分自身から問いかけられるのだ。
そもそも、あなたは、そんなにも度々炙り料理を作っているのか、と。
答えは確実に、自身を持ってノーである。
焦げ目をお料理につけたいときに、簡単かつ、あっという間につけることができる点を気にいっているのだと思い込んでいたのだけれど、
どうやら、「ガスバーナーを使って、じゅじゅーっと美味しそうな音と香りを解き放ちながら食材を炙ってみたい」
「一度くらい、あれをやってみたい」という好奇心だったのだ。
もし、既に購入していたのなら、我が家のキッチンには見向きもされなくなったバーナー器具が、行き場を失い転がっていたであろう。
早まらなくて良かった、そう思ってホームセンターの出口へ向かいながら、
「あ、お買い物」と踵を返し、「でも、いつか。一度くらいは」そう思った、ある日の夕暮れ時である。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/