近所に、珍しい観葉植物をメインに季節の生花を扱っている花屋がある。
観葉植物と言っても、手軽に持ち帰ることができるような観葉植物ではなく、人の背丈ほどある大きなものばかりなので、
1、2度店内をのぞかせてもらって以降、なかなかご縁が無いまま月日は過ぎていた。
それでも、ガラス越しに目にする植物は素敵なものが多く、その花屋の前を通る際には、自然と視線が向いているように思う。
その日も、青々とした植物たちを眺めつつ通り過ぎようとした時だった。
店内の中央に、様々なワイルドフラワーが並べられていることに気が付き、踵を返した。
ワイルドフラワーというのは、南アフリカやオーストラリアなど自然豊かな場所に自生している野生の花のこと。
日本で見ることができる花とは印象が異なる色や形状の花が多いことに加えて、とても丈夫で、見応えあるドライフラワーに仕上がることもあり、
知らず知らずのうちに、様々な用途にアレンジされたワイルドフラワーを目にしている方も多いのではないかと思う。
特に今の時季は、インテリア、クリスマスリース、ブーケを逆さに吊るして乾燥させたスワッグ、
クリスマスオーナメントにアレンジしてあるものやプレゼントなどのラッピング飾りなど、普段見る機会が少ないナチュラル素材に姿を変えていることも多い植物である。
一般的なお花と比較すると、珍しさや輸入に頼っている入手ルートなどの関係からなのか、生花の値は少々張るように思うけれど、野生の生命力の強さだろうか。
生花を楽しむことができる期間も長いのだけれど、生花を楽しんだ後のドライフラワーも長期間、素敵な状態が保たれることが多いため、
私の周りには生花を飾るのはワイルドフラワーが手に入ったときだけ、という方もいらっしゃる。
私は、ワイルドフラワーに触れる機会が少ないこともあり詳しいわけではないのだけれど、
こうして花屋で見かけると一期一会のような気がして、つい引き寄せられてしまうのだ。
「オシャレなお花たち」だとか「キュートなお姿」などという目で見ることの方が多いけれど、
植物図鑑から飛び出してきたような、初めて目にする知らない土地に生息する植物たちの姿は、いつもとは異なる感覚や想像を運んできてくれるようにも思う。
現在は、日本でも一年を通して栽培されているワイルドフラワーもある。
よく目にするのは、オーストラリアの砂漠に咲く、ワックスフラワーという名の可愛らしい小花だろうか。
私が名前を憶えている唯一のワイルドフラワーなのだけれど、特徴は花びらと葉にある。
ピンクと白の可愛い花びらなのだけれど、花びらの表面は、ロウでコーティングしたような艶をまとっており、
葉を取り除くと、取り除いた部分からは柑橘系の爽やかな香りが放たれる、面白い花である。
私はこの時季になると1本だけ購入し、枝分かれしている部分をカットし、小さなブーケのような形にまとめ背の低い花瓶に生けている。
毎日少しずつ葉を摘まみとることで、ほんのりとした柑橘系の香りが室内に広がるため、
慌ただしさに飲み込まれそうな師走のお助けアイテムとなっている。
ピンクの姿が愛らしいワックスフラワーを手にする機会がありましたら、
その個性的な質感の花と、葉を取り除いたときに香る柑橘系の香りを是非。
小さくても、新しい経験は、いくつになっても良いものですよ。
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