年末は、ホッとひと息つくにも気合いがいる。
街中は、大勢の方の見えぬ気忙しさに覆われており、私もそれに影響を受ける一方で、
同じような影響を知らぬ間に周りに発しているのだろうと思う。
このような時だからこそ、自分自身のためにも周りのためにも、気合いを入れてひと息つくのだ。
そのようなことを言ったら“甘い!”と喝を入れられてしまいそうだけれど、
いやいやいや、自分で思う以上に、こういった地味なセルフケアが大切ではないかと、思う。
自分の力以上のものを、休みなくフルで出し続けるということは、不可能に近い話。
しかし、自分自身にほんの少しの余裕があれば、自分にも周りにも優しくできるし、
同じ手助けをするにしても負担を感じることなく出来るのではないかと、思う。
そのようなことを思いながら、久しぶりに通りかかった和モダンのカフェへ入った。
外の景色が見える場所に座り、お抹茶と和洋折衷の小さな焼き菓子のセットをお願いした。
素敵な器や小さな焼き菓子に刺してある、和紙で作られた傘のカクテルピック、焼き菓子の甘さに、抹茶のほろ苦さ。
それら全てが元気の素として、身体中に染み渡るようだった。
空いていないと思っていたお腹も思い出したかのように鳴りはじめ、お腹が空いていたことに気が付く始末。
周りの席に人が居なかったことに胸を撫でおろし、最後の焼き菓子を味わった。
すると絶妙なタイミングでお店の方に「よろしければどうぞ」と振出(ふりだし)を手渡された。
「振出(ふりだし)」というのは、茶器の道具のひとつで、ひょうたんの下部の丸み部分を切り離したような形をした携帯用の器のこと。
器の口の部分の大きさによって中に入っているものが異なるのだけれど、金平糖や豆菓子などの小粒で日持ちするお菓子が入っている。
振出(ふりだし)という名は、中身を取り出す際に器を振って出すように見えることから、そう呼ばれるのだそう。
本来は陶器やガラス製の器だけれど、現代のモノに例えるならばミント菓子でお馴染みのフリスクのようなイメージではないかと思う。
お茶席では、この振出(ふりだし)が順に回され、自分で中身を取り出すのだけれど、その時のお作法は、こう。
ひょうたんの下部の丸み部分を切り離したような形をしているそれを左手で持ち、
蓋となる栓を引き抜いて、用意していた懐紙の右上に蓋を置く。
この時に懐紙の左上を少し折り曲げておくと、金平糖や豆菓子がコロコロと転がって散らばるのを防ぐことができるので、忘れずに折り曲げておく。
そして、いざ!お菓子を取り出すぞと意気込むところだけれど、フリスクを取り出すときのように振出(ふりだし)を勢いよく振るのはNG。
この、壺のような振出(ふりだし)の中身が勢いよく出てしまわぬように、両手でくるくると回転させながら適量を懐紙の上に出し、
その後は蓋をして次の方へ振出(ふりだし)を手渡すのだ。
私にとって振出(ふりだし)は、正直なところ、シャカシャカシャカッと上下に揺らして中身を混ぜてしまいたい衝動にかられるようなフォルムをしているように思うのだけれど、
中身を出す際には“優しくくるくると回転させながら”がポイントである。
その日は、お店の方のご厚意に失礼がないよう、振出(ふりだし)を、優しくくるくると回転させると、
中から淡いレモン色をした金平糖が出てきた。
控えめに取り出したのだけれど、「もう少しどうぞ」というお言葉に甘えて再びくるくると。
口に入れたそれは、ほんのりとレモンの味がした。
滞在時間は30分にも満たなかったけれど、3日間は走り続けられそうな元気がチャージできたように思う。
皆さんも、このような時だからこそ、気合いを入れてホッとひと息を。
今日も皆さんが笑顔でありますように☆彡
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