お天気が良くて時間に余裕があったその日、私は遠回りをして帰宅することにした。
風の冷たさと、首にくるくると巻いたストールの温かさの温度差も心地がよく、足取りも思う以上に軽やかだったように思う。
家とは真逆の方向にある川沿いを目指して歩いていると、ご年配の女性たちが輪になって爆笑している場面に遭遇した。
30メートルほど手前からでもはっきりと聞こえる笑い声は、女子高生たちのそれにも似ているようにも見え、可愛らしいと思った。
女性たちがいる場所は、ハイキングへ出かけた方々がハイキングコースから戻ってくるときに使われるバス停の近くだった。
そして、女性たちの装いがハイキング風であったことから、今日は自然を満喫してきたのだなと思いながら、その輪の横を通り過ぎようとしたときだった。
「膝の笑いが止まらないわ」「私もよ」と聞こえた。
すると、また女性たちが爆笑し出したのである。
そのような状況に出遭ってしまい、視線を向けずにもいられず、私は女性たちの輪へと視線を向けた。
すると、私の人生史上はじめてだと言ってもいいくらいガクガクに揺れている膝を目撃してしまったのである。
驚きと女性たちの笑い声が混ざり合い、笑いだしそうな自分を必死に抑えながら素通りしようとしていたのだけれど、
不意に肩を叩かれ、「あなたもいつか分かるわよ、久しぶりに体を動かすと、こうなるのよ」と言われた。
もう、ここから先は言わずもがなであるが、私も少しだけ、その輪の中で笑うこととなった。
予定外の選択をすると時々、このようなハプニングに遭遇することがあるため、予定外の選択が止められないのだけれど、私にとっては素敵な一期一会の時間だったりもする。
久しぶりに長時間歩いたときや運動をしたとき、上り下りを繰り返したときなどに、膝がガクガク揺れること、震えることがあるけれど、
これは太ももの筋肉の連携がチグハグになり起こるのだとか。
いつだったか、仕事先の旅行に参加したときのことだった。
軽いハイキングコースを歩きながら自然を堪能する時間が設けられていたのだけれど、参加した中の数人がハイキングを終えると同時に膝に力が入らないと言い、
今回の女性たちのような状態になったことがあった。
その時にいらした筋肉に詳しい方が言うには、簡単に動かしているように見える膝だけれども、
数種類の筋肉が上手く連動することで動いているのだそうだ。
当時の私は、それほど筋肉に熱い思い入れがなかったこともあり、とても申し訳ないのだけれど、その貴重なお話の大半、他の事を考えていたように思う。
ただ、年齢を重ねるにつれておこる筋肉の衰えだけでなく、
日頃のライフスタイルによって使用する筋肉に偏りが出てしまうと、
年齢に関係なく膝が動かしにくくなり、普段とは違う動きをほんの少し行っただけで膝がガクガク揺れる状況を招くので、
「気が付いたときに、屈伸を数回する習慣をつけておくと良い」という内容だけは、しっかりと記憶に刻まれている。
私の場合は、1日の大半をPCと向かい合って過ごすことが多い職業柄、筋肉のバランスが良いとは考えられない為、
席を立つたびに屈伸をしていた時期があったのだけれども、今回の出来事をきっかけに、それをすっかり止めてしまっていることに気が付くこととなった。
膝が笑う様子を大勢で笑い合えるというのも、楽しくて味わい深い時間であるようにも映ったけれど、何ごともバランスだ。
今日からまた、気が付いたら屈伸でもしてみようかしらと思った寄り道であった。
皆さんも“気が付いたら屈伸”、ご一緒にいかがでしょうか。
それにしても、膝ってあんなにも豪快に笑うものなのだな。
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