まだ辛うじて早朝のような清々しい空気が残っている時間帯に外出をした。
大通りを避け、小路を縫うようにして目的地へと向かっていたのだけれど、とあるお宅の前を通りかかってギョッとしてしまった。
生垣の上部に細工が施されているのか、生垣の上部には垂れ下がるタイプのサボテンが植えられており、ご自宅をぐるりと取り囲む様は、まるでメドゥーサの髪の毛のように見えた。
サボテンの名は知らないのだけれど、ビビットカラーの艶やかな花を咲かせるサボテンで、
鉢からこぼれ出したように垂れさがるため、吊るして飾ったり、高いところに配置して楽しまれている、それだった。
ただ、家をぐるりと取り囲むようにして生垣に植えこまれている姿を見るのは初めてだったこともあり、少々失礼な第一印象を抱いてしまったのだ。
好みも思い入れも各々なので、それ以上のことを思うことなく通り過ぎようとしたときだった。
死角になっていた場所から家主らしきご婦人が出てきて、「いいでしょ、これ。お気に入りなの」と満面の笑みで仰った。
メドゥーサの髪の毛みたいだなんて口が裂けても言ってはいけない。
瞬時にそう判断した脳は私に、「花が咲いたらもっと素敵ですね」という言葉を言わせていた。
家を出てから5分足らずの時間しか経っていなかったのだけれど、思わぬどっきりに遭遇した朝となった。
メドゥーサと言えば以前、「ペガサスはメドゥーサの血から生まれた」という話題に触れたことがあるかと思うのですが、
今回は、ギリシャ神話に登場するメドゥーサのお話を簡単に、と思っております。
時々、見聞きするけれどメドゥーサって何者?そう思われている方は、読書気分でチラリとのぞいていってくださいませ。
メドゥーサは、宝石のように光り輝く瞳を持ち、見たもの全てを石に変える力を持つ怪物で、ギリシャ神話に登場します。
ビジュアルですが、髪の毛は無数の毒蛇でできており常にウジャウジャと動いています。
歯はイノシシの歯、手は青銅、そして背中には黄金の翼を持っていると言われています。
メドゥーサは女性なのですが、今も昔も、様々な作家たちの創作意欲を刺激する存在でもあるため、見聞きする機会が多い存在ですが、
容姿の描写は、作家によってアレンジされていることも多々あります。
このため、メドゥーサと聞いて各々が抱く印象は、目にしたものによって多少異なることもあるのですが、
メドゥーサのトレードマークと言えば、無数の毒蛇でできた髪の毛です。
見るからに怪物感たっぷりといった見た目ですが、もともとは艶やかな美しい髪の毛を持った美少女だったと言います。
ではどうして、美少女が怪物に?ということなのですが、ある女神の怒りを買い怪物にされてしまったのです。
その女神というのは、知恵や戦略を司る知性の女神と言われており、
現在も様々な都市の守護女神として大切にされているアテナという名の女神です。
※ギリシャの首都・アテネも、この女神の名です。
アテナを怒らせてしまった理由のひとつは、メドゥーサが自分の髪の毛を自慢しながらアテナと美しさを競いあったこと、
そして、メドゥーサは海の神として知られているポセイドンの愛人だったとも言われているのですが、
この2人がアテナの神殿で密会したため、アテナの神殿が汚されてしまったことなどが挙げられています。
このような理由から、美少女だったメドゥーサは怪物へと姿を変えられてしまったのですが、
後に首を切り落とされることとなり、その時に出た血からペガサスが生まれています。
メドゥーサのエピソードには、ドラマ顔負けのストーリーがあるのですが、その辺りはまた機会がありましたら……。
メドゥーサの髪の毛は無数の毒蛇ですので、一瞬ギョッとしてしまうビジュアルではありますが、
よく見てみますと、とても美しい顔立ちで描かれていることが多い存在です。
メドゥーサの美しかったころの姿には、作者の作風や好みが反映されていたりもしますので、
メドゥーサに触れる機会がありましたら、今回のお話をチラリと思い出していただきつつ、作者の好みも楽しんでみてはいかがでしょうか。
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