幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

古のモテ男から見る蒲(ガマ)の数珠繋ぎ。

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子どもの忘れ物だろう。

道端の花壇に、とてもカラフルな色使いの表紙が印象的な『因幡のしろうさぎ』の絵本が立てかけられていた。

表紙上で白うさぎよりも目立っていたのは、物語内で白うさぎを助けた神様界の大御所であり、スーパーヒーローであり、神様界のモテ男だとも言われている大国主命(おおくにぬしのみこと)である。

“昔ながらのイケメン”という表現が適しているのかどうかは分からないけれど、

表紙を飾っていた彼は、ご年配女性の心を鷲づかみにしてしまいそうなルックスで描かれており、目立たぬ白うさぎを少しばかり気の毒に思ってしまった。

因幡のしろうさぎか……と思いながら歩いていると、ふと、蒲(ガマ)の花粉/蒲の穂のことを思い出した。

蒲(ガマ)の花粉/蒲の穂とは、大国主命(おおくにぬしのみこと)が、全身の毛皮を剥がされて重体となった白うさぎを助ける際に使った薬として知られている。

初夏辺りから夏にかけて水辺付近で目にする、このような植物である。

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竹輪のようにも見える筒状のものは花穂と呼ばれており、初夏から夏にかけて花粉を振りまいたあとは、空芯の軸だけを残して散ってしまうという。

ワタクシ、実物を見たことも触れたこともあるのだけれど、軸だけになった姿やその過程を目にしたことがないため、何となく、ミステリアスなイメージを抱いてしまう植物という目で見ている。

いつだったか、漢方薬を扱う店で蒲黄(ほおう)と呼ばれる生薬を目にしたことがある。

それは蒲(ガマ)の花粉を薬にしたものだったのだけれど、蒲(ガマ)の花粉は昔から、傷薬や利尿作用を促す生薬として使われているという。

これを聞いたとき、大国主命(おおくにぬしのみこと)が蒲(ガマ)の花粉を、白うさぎの手当てに使ったという件は、物語上のことではなかったのかと感心した記憶がある。

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蒲(ガマ)は、『因幡の白うさぎ』以外の古い書物の中でも時々目にするのだけれど、他にも、蒲(ガマ)は、蒲鉾や蒲焼きの語源だという説がある。

蒲鉾と言えば、現在は板付きのものを多く見かけるけれど、はじめは細い竹の棒にすり身を付けて焼いていたため、

その姿が「蒲(ガマ)の穂」に似ているということから「蒲穂子(がまほこ)」と呼ばれていたものが「かまぼこ」に変化したのではという説である。

他にも、槍や薙刀といった古の刀を鉾(ほこ)と言うけれど、蒲(ガマ)でできた鉾(ほこ)に見えるということから、「がまほこ→かまぼこ」となったのでは?という説もある。

そして蒲焼きだけれども、現在鰻は、開いてから焼き上げるのがセオリーとされているけれど、昔は開かずに鰻の中央に串を刺して丸焼きにしていたため、

その見た目が蒲(ガマ)の穂に似ていることから、蒲焼きという呼び方が出来上がったという話もある。

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正直なところ、今の私たちにとって「蒲(ガマ)」という植物は、それほど身近なものではないようにも思うのだけれど、

このように様々な所に登場するところを見ると、先人たちにとっては、とても身近な植物だったのだろうと思う。

今年の蒲(ガマ)の時季は、もう少しだけ先ではありますが、蒲(ガマ)の穂を目にしたり、蒲鉾や蒲焼きを召し上がる機会がありましたら、

今回のお話の何かしらをチラリと思い出していただけましたら幸いです。

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