通りを歩いていると、とある敷地のエントランス付近に、引き抜かれたばかりであろう雑草が積み上げられていた。
その一番上には黄色いカタバミの姿もあった。
開花時期が少し早いような気がしたのだけれど、日当たりが良い敷地内で一斉に開花したのだろう。
可愛らしい草花がくったりと萎れている様は、可哀想にも映るけれど、カタバミという植物の強い繁殖力と、繁殖スピードを思うと、仕方ないようにも思った。
カタバミは草花だけれども種類が多く、世界中で見ることができ、国や土地によって呼び名が変わる植物だ。
カタバミは、その繁殖能力の高さから除草剤などを使って駆除すべき雑草として扱われることも多いけれど、その一方で、多くの国で大切に扱われている植物でもある点が面白い。
例えば、ヨーロッパにはカタバミのことを、キリストを称える言葉でもあるハレルヤと呼ぶ国や地域がある。
これは、カタバミの開花時期が、キリスト教にとって大切なイースター(復活祭)と重なることからだと聞いたことがある。
このような理由もあり、カタバミはキリスト復活やマリア様を連想する花でもあり、「喜び」「母の優しさ」といった花言葉が付けられているのだとか。
そして、日本ではカタバミという呼び名のほかに鏡草と呼ぶことがある。
これは、カタバミの葉や茎からでるエキスを使って鏡や仏具を磨くとピカピカになることから、そのように呼ばれるようになったそうで、ここから「輝く心」という花言葉が付けられたという説がある。
更に日本には家紋というものがあるけれど、このカタバミが使われた家紋は「たかばみ紋」と言って、家紋の代表格の一つとして知られている。
どうしてカタバミを家紋に?というところだけれども、冒頭で触れたとおり、カタバミの特徴は、非常に強い繁殖力と、繁殖スピード。
これを、絶えることがない家系や子孫繁栄といった願いと重ね合わせ、縁起の良い家紋として使われているようだ。
家紋に触れる機会はそう多くはないけれど、自分の家紋から家系のルーツに触れてみるのも、面白いのではないかと思ったりもする。
そしてやはり、カタバミが持つ生命力に魅せられていたのか、国内外を問わず、カタバミをお守りとして身に着けていたという話も多く見聞きする。
このような扱われ方をしている植物だと知ると、私たちがカタバミを雑草として扱い、除草剤を使って根絶やしにするのは罰当たりなのかしら?という思考が頭を過りそうにもなるのだけれど、
まぁ、その辺りは、時代によって状況も都合も変わってしまうし、どのようなものも一長一短、といったところだろうか、と思う。
ただ、生命力と力強さを兼ね備えた雑草だとは言え、よくよく見てみると可愛らしいお姿をしている草花である。
目に留まった際には、雑草だと毛嫌いせずに今回のお話をちらりと思い出していただき、愛でていただけましたら幸いです。
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