アイスクリームショップのショーケースの前に、お孫さんを連れたご夫婦がいた。
こんなにも沢山の種類があると、どれを選んだらいいのか分からないと話すご夫婦のそばでは、自分の順番が来るのを心待ちにしているお孫さんが、ピョンピョンと飛び跳ねていた。
しばらくして、お孫さんがご夫婦を見上げて発したのは「こんなに沢山あると、選ぶのが楽しいね」という言葉。
同じものを前にして感じることもそれぞれ。
この違いがとても微笑ましかった私は、ショーケースの中ではなく、3人の様子に視線を奪われてしまった。
選択肢の多さや自由をどのように感じるかということにも、身を置いてきた時代や環境の影響が出る。
例え、身近な家族であったとしてもだ。
選択肢と言えば、最近、エアコンの正面パネルの色を好きな色にカスタマイズできるサービスを始めた会社があると聞く。
しかも、600色近い色の中から自分の好みの色や、室内インテイアに合わせた色を選ぶことができるというから、驚きである。
私は引っ越しすることが多いからなのか、「エアコンの色がこういう色だといいのに」と感じたことが幾度かあったのだけれど、まさか、選ぼうと思えば選ぶことができるようになるなんて。
もちろん、これまでだってできないことではなかったのだろうけれど、そうしてこなかった域に足を踏み入れることにした会社が登場したということなのだろうと思う。
新しい時代を前に様々な話題が飛び交っているけれど、次の時代は自分が欲しているものを自分の意志で選んでいく時代で、それを個性と言ったりもするのかもしれない。
大勢が一斉に同じ流れに乗るブームが起きる一方で、ブームの真逆を行くようなものに目を向ける人たちも意外と多い。
そして、そのようなニーズに応える新しい御商売なども多々生まれていて、様々なモノゴトを見聞きする度に面白いなと思う。
以前、ダサかっこいいという言葉が流行ったけれど、カッコいいをある程度まで突き詰めていくと、それだけでは物足りなくなり、
スパイス的なもの、この場合ではちょっとした「ダサさ」をトッピングしたくなるのも、またひとつの人の心理なのだろうと思ったりもして。
そのようなことを思っていると冒頭で触れたご家族の順番が来た。
お孫さんはショーケースの向こう側にいる店員にカラフルな一品を指さして「これ、下さい」と元気に言った。
そして、どれを選んだらいいのか分からないと話していたご夫婦は定番のバニラアイスを注文した。
新しい道を選ぶも、これまでの道を選ぶも、良いとこ取りをした道を選ぶも良し。
各々にとっての自由を手に進もうぞ、そのような声なき声が聞こえたような気がした午後である。
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