電車に揺られながら鞄の中をのぞくと、忍ばせておいたハンカチが目に入りニンマリとしてしまった。
TPOへ配慮したものもひと通り持ってはいるけれど、全てを取っ払って「ただただ好き」と感じたものに身を委ねる心地良さは、想像以上である。
「一枚の布でしょ」と言う人もいるけれど、エレガントさを極めるも良し、キュートさを極めるも良し、遊び心を満たすも、なりたい自分を表現するも良し、手触り肌触り素材重視というのも乙である。
自分の為に選ぶ一枚は、小さいけれど大きな自由を秘めた一枚だと思うのだ。
それに、思わず口元が緩んでしまうハンカチは、面倒なアイロンがけも少しだけ、本当にほんの少しだけではあるけれど、ニンマリとした時間にしてしまうのだから不思議である。
先日は、偶然立ち寄ったお店で総レースの素敵なハンカチを見つけたのだけれど、この手のハンカチはお洗濯とアイロン仕上げに手間がかかるからという理由で伸ばしかけた手を引っ込めると、「形状記憶」「イージーケア」の文字に目が留まった。
アイロン要らずの総レースのハンカチがこんなにも豊富だなんて、アイロン作業から解放されたい私にはもってこいではないかと、一人静かにテンションが上がった。
手間暇をかけることが嫌いなわけではないけれど、このような便利機能は、やはり有難いと思ってしまう。
しかし、このお店がおすすめしていたハンカチは、形状記憶でもイージーケアでもない、オーガニックコットンのハンカチだった。
綿花を育てるには様々な化学薬品が必要になると聞いたことがある。
ある程度育った後も、害虫や病気予防のために薬剤を使用し、綿花収穫の効率化のために葉っぱを人為的に落とすための落ち葉剤なども使われるという。
こうして作られるコットンが一般的なコットンで、これらの化学薬品の一切を使わずに手間暇をかけて育てた綿花で作られるコットンがオーガニックコットンである。
これだけを聞くと一般的なコットンには、大量の化学薬品が残っているような印象を抱きそうになるけれど、
実際のところ、一般的なコットンに残っている化学薬品の量はそれほど多くはないと言い、オーガニックコットンとも大差ないのだそうだ。
ただ、オーガニックコットンは厳しい基準のもと、収穫後も化学薬品の残量を幾度も検査するなどしており、
デリケートな肌を持つ赤ちゃんや、アレルギー体質の方にとっては、不安材料を出来る限り取り除いたコットンということで、安心できる素材として認識されている。
そしてこれは、お店の方の受け売りだけれども、これまでのオーガニックコットンの価格は、コットンのクオリティというよりは、全ての工程にかけられる手間暇が反映されたものだったけれど、
近年では綿花栽培をする方が増え、綿花の成長に適した環境で栽培されることにより化学薬品が不要になることもあるといった理由から、リーズナブルなオーガニックコットン製品も増えているのだそうだ。
すっかり世の中に定着したオーガニックという言葉だけれど、一口にオーガニックと言っても様々なのだと知ったハンカチ売場である。
素材にこだわるハンカチ選びも楽しそうだけれど、今の私は、自分の直感がシンプルに好きだと感じるデザインに身を委ねる心地良さにニンマリしたい気持ちが勝っているようだ。
ハンカチを新調する機会がありました際には、お好きな視点で楽しんでみてはいかがでしょうか。
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