昨年の夏、いや晩夏頃の食事会だっただろうか。
出てきたサラダを覗き込み、んっ、これはもしかしてパースレーンでは?と思った。
聞くところによると、日本では数年前辺りから次にブームがくるであろうスーパーフードとして注目されており、自家栽培したものだと仰っていた。
私はイギリスで初めて出会った食材で、パースレーンという呼び名で覚えてしまった野菜(ハーブ)なのだけれど、フランスではプルピエと呼ばれており、そして昨年、日本ではスベリヒユと呼ばれていることを知った。
私は海外で出会った不思議な食材を書き留めていた時期があったのだけれど、このパースレーンもその一つである。
この食材、ぱっと見た印象は観葉植物のようなのである。
ひょろりとした細長い茎の先に雫型のような形をした、ぷっくりとした厚みをもつ葉っぱが付いている。
どのような場所でもある程度育つ生命力を持っているため、誰でも簡単に種から育てることができる野菜(ハーブ)である。
味はクレソンのようだとか、ホウレンソウのようだなどといった表現を見かけるのだけれど、私が最初に感じた感想は、「可もなく不可もなく」である。
強いて良く言うならば、様々な葉っぱが混ぜ込まれたべビリーフを食べたときに感じるような葉っぱの味で、誤解を恐れずに言えば、雑草感が無いこともないような……という印象だろうか。
当時、日本からやってきた私のために開いてくれた食事会で、このパースレーンが登場した。
可愛らしいビジュアルに心ときめきはしたのだけれど、お味の印象は薄かった。
しかし、話を聴けば、えごま油などに含まれているオメガ3脂肪酸や各種ビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれている価値ある高級野菜として取り扱われているというのだ。
当時、私にパースレーンを振舞ってくださった方は、おもてなしの意味を込めて出してくださっていいたのだと思う。
話も聴かぬまま、うっかり「可もなく不可もなく」などと口走らなくて良かったと、胸を撫で下ろした瞬間でもあった。
海外で出会った不思議な食材を書き留めていたノートには、パースレ―ンのその後が記されていた。
その食事会からしばらく経った頃、私はパースレーンの素の姿を目にする機会があったようだ。
そしてその時の感想を、「雑草か観葉植物か!?不明」と書き残していた。
外国の知人に、日本の春の味覚でもある山菜の話をしたとき、日本人は雑草を喰らうのか?と言われたことがある。
いやいやいや、そうではなくてと拙い英語で山菜のことを伝えようとしたけれど、私は山菜の良さの1割も伝えられなかったように思う。
しかし、知人たちが感じた「日本人は雑草を喰らうのか」を私も、パースレーンに対して「イギリス人やフランス人は雑草を喰らうのか?」と感じたていたのである。
なーんだ、お相子だったのかと、長い時を経た今、あの時の気持ちが昇華したこの頃である。
日本で次にブームがくるであろうスーパーフードとして注目されている理由は、この栄養価値の高さと映えるビジュアルだろうと想像される。
が、映えるビジュアルを追い求めるブームが去りつつある昨今、パースレーンにスポットライトが浴びる日は来るのか否か、そのようなことを思う午後である。
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