幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

略奪を狙うツバメに目を光らせる見守り隊、ここにあり。

f:id:hiiragi1111:20190617170109j:plain
細道を抜けて大通りに出ようと思い、普段あまり使わない道へ入った。

すると、細道へ入ってすぐのところに数人の、ご年配女性たちの姿があった。

特段気にすることもせず、女性たちの背後を通り過ぎようとしたところ、付近一帯へ視線を向けていた1人の女性が、「見て、雄ツバメが奥さんを横取りしようとしてるのよ」と声をかけてきた。

その力強い声のトーンに押され、半ば強引に足止めされてしまった私は、立ち止まってツバメの巣を見上げた。

すると、チェリーレッド色をした若々しいブラウスをまとった別の女性が、私の左腕をがっちりと掴みながら、事の顛末を話し始めた。

f:id:hiiragi1111:20190617170557j:plain

そのお宅の軒下作られたツバメの巣には毎年ペアのツバメがやってきて子育てをするのだそう。

今年もペアのツバメが帰ってきて卵を産み、子育てをはじめ、先日5羽の子ツバメたちの巣立ちに立ち会ったという。

それからしばらくして、またペアのツバメが家の側を飛び回っていたため気にかけていると、既に出来上がっているツバメの巣の近くに、新しい巣を作り始めたのだそう。

お話して下さっている女性曰く、2度目の子育てを終えて旅立ったツバメ一家の空いた巣を使えばいいのに律義に、2人で(正確には2羽である)巣作りから始めたものだから、ご近所一同、応援していたとのこと。

しかし、その巣が完成間近を迎えたころ、事件は起こったそうだ。

どこからともなく1羽の雄ツバメがやってきて、既にペアになっている雌ツバメを略奪するタイミングを狙って度々ちょっかいを出してくるようになったという。

子育てを始めれば諦めて去っていくのでは?と思っていた私に女性は、雌ツバメを狙っている雄ツバメは、雛も狙ってくるから厄介なのと力強く続けた。

語尾が強調される度に、両手でぎゅっぎゅっと力強く掴まれる二の腕がそろそろ限界ですとは言い出し難い雰囲気に、もう聞き役に徹してしまおうと腹を決めた。

それから短い時間ではあったけれど、ここ数日の間に略奪を企んでいる雄ツバメが行った数々の悪行を聴くこととなった。

空き家を使わずに一から巣作りに勤しんだペアのツバメたちよ、どうかどうか無事に子育てを終えておくれ。

そして、略奪を企んでいる雄ツバメにも良きことがあるといいのだけれど。

そのようなことを思いながら、ジンジンとする二の腕を摩りながら、その場を後にした。

f:id:hiiragi1111:20190617170243j:plain

七十二候(しちじゅうにこう)という暦には、4月上旬にくる「玄鳥至(つばめきたる)」と、9月半ば過ぎにくる「玄鳥去(つばめさる)」と呼ばれる期間がある。

言葉が表す通り、ツバメたちが帰ってくる時期と去っていく時期のことである。

厳しすぎる日本の夏を無事に超えることができるのだろうかと、ふと心配も脳裏を過るけれど、もうしばらく日本に居るツバメたちは、子育て真っ只中であり、長い旅路に備えて一生懸命成長中です。

ツバメたちを目にする機会がありましたら、エールを送ってあげて下さいませ。

関連記事:

画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/